映画『ターミナル』が現実に起きていた!
成田空港に籠城してる中国人に会ってきた

馮正虎
馮正虎さん

 2009年11月4日から成田空港に籠城している中国人がいるんですよ。名前は馮正虎さん(55)。もともとは実業家で、民間研究機関「中国企業発展研究所」の所長も務めた著名な経済人。
 ところが1989年、天安門事件に際し、人民解放軍による民主化運動の弾圧を批判して当局の監視下に入ったんですな。
 
 2009年は天安門事件20周年、建国60周年という特別な年だったこともあって、馮さんは微罪で逮捕されたあと、天安門20周年の6月4日を過ぎるまで国外に滞在することを条件に釈放されました。それで、本人も納得の上、とりあえず留学経験があった日本に来たわけです。
 
 その後、何度も帰国しようとしたものの、中国が入国拒否。7回帰国して7回とも日本へ強制送還されてしまいました。8回目の帰国では、警官4人に強制的に日本行きの飛行機に乗せられたそうです。
 そんなわけで、2009年11月4日以降、抗議のため成田空港の入管前で寝泊まりし始めました。正確に言うと、第1ターミナルの入国審査手前のロビー。日本でもないし中国でもない不思議な空間ですな。ここで体の幅より狭い長椅子の上で、カバンを枕に寝てすごすのです。
 それからクリスマスを迎え、正月を迎え、もうすぐ成田籠城3ヵ月。
 
 で、いったいどんな生活をしてるのか、ご本人に生活ぶりを聞いてみたよ。
 当初、会う前はものすごく臭いのではないかと思っていましたが、案外さっぱりしてました。髪を洗うのも体をふくのもトイレの水。冬はきついです。

 食事は支援者の差し入れがあるそうですが、主食はビスケットなどお菓子ばかり。もちろん飲み水はトイレの水。
「たまにスッチーが果物やピザをくれるのでありがたい。今では1ヵ月以上の食べ物があるよ。お湯がないのでカップラーメンは水で食べていたけど、台湾の友 人が電気ポットをくれたので温かいものも食べられるようになった」と笑顔で語ってくれました。とはいえ体重はさすがに激減したそうですが。

馮正虎
これが全財産

 現在、馮さんは携帯とパソコンを駆使し、ブログとツイッターで世界に窮状を訴えています。世界中で大問題になっていますが、日本ではこれまでほとんど報じられてきませんでした。
 馮さんは鳩山首相に手紙を書いて助けを求めましたが、まるで相手にされず。実は小沢一郎の単行本を中国訳したこともあるので、次は小沢一郎に助けを求める可能性もあるかもしれません。

 馮さんは、実際に会ってみると穏やかな人で、「活動家」という感じではありません。で、中国に気を遣い、何の対策も取らない日本政府に対し、「これじゃ 日本は中国の属国だよ」と怒るより笑うのです。
 ちなみに馮さんは日本の滞在ビザが2010年6月まで残っているので、日本に入国することは可能。妹も千葉に住んでいるんですが、「ビザが切れるまで、体力と気力の続く限り籠城を続ける」と意気軒昂に語るのでした。

馮正虎
ツイッターで世界に窮状を発信中(アカウントはfzhenghu)

 

 その後、馮正虎さんは2010年2月3日に日本へ入国しました。中国への帰国のめどがついたからで、抗議行動は92日間におよびました。

 参考までに、馮さんが鳩山首相に書いた長文の手紙を全文公開しておきます。



 尊敬する日本国総理大臣 鳩山由紀夫 様:

 拝啓



 日本の首相に選ばれ、心よりお喜び申し上げます。「民主党の勝利は国民の期待感」とはあなたの記者会見の中で言われた言葉です。
 私は、日本国民の1票が日本憲政120年来最初の革命的意義を持つ政権交代を実現するのを目の当たりにしました。これは20年来の平成維新の理想の実現です。
 私は1人の中国国民ですが、日本の政治改革家の1993年から今日までの歩みとあなた方の理念、政策に関心を寄せてきました。民主党の経験は中国の改革者が参考にするに値します。



 私は小沢一郎『日本改造計画』(1995年、上海遠東出版社)の中国語版訳者です。1994年に私は日本平成維新の代表作3冊(小沢一郎『日本改造計画』、大前研一『平成維新』、細川護照『日本新党責任ある改革』)を携えて帰国し、私の友人である当時の上海遠東出版社社長楊泰俊氏に、中国人が日本の改治改革を理解し学ぶように、翻訳出版を勧めました。

 日本民主党が衆議院議員選挙で勝ったことは、国民生活第一の政党の政策が日本民衆の幅広い支持を得たということで、選挙権のない在日中国人も民主党を支持しました。私は何人かの在日中国人に「あなたはなぜ民主党を支持するのか?」と聞きました。彼らは「民主党が政権を取れば、私たちの子供も手当がもらえ、高校が無償になり、高速道路も無料になり、また減税などの経済的利益があるから民主党を支持するんだ」と答えていました。

 国民主権の民主国家では、票を得られれば政権が得られます。あなた方は今「官僚主導政治」から「政治家主導政治」への体制転換を進め、「国内の経済発展と財の分配しか考えてこなかった『片肺の国』から、国際社会で通用する一人前の『普通の国』に脱皮することができます。」(小沢一郎『日本改造計画』)。

 私はこの十数年来中国と日本を往来し、日本について少し学びました。日本は経済的に豊かで、生活が安定し、環境のきれいな社会ですが、国際社会において今までの日本の政治的地位は経済的地位と極めて不釣り合いで、米国、中国との関係は不平等的な関係と思われます。対外関係においては、一般に短期的な企業経済利益を追求し、民主・自由・人権尊重などの国の価値観を体現する長期的国家利益を軽視しています。

 官僚主導の三流政治は日本の一流の経済に奉仕するためのもので、日本の政治家の多くは隣国の人権・民主化問題にほとんど関心を示さず、政府機関も「対外関係」に関わる問題には非常に反応が鈍感になっています。最近、私が日本で帰国を禁じられた事件においても、日本政府が外国の人権問題には冷淡で、大国との関係では自国の主権意識さえないことを深く感じ、一外国人として日本を恥ずかしく思いました。日本は普通の国でしょうか? たしかに、政権は交代すべきでありました。

 今年4月1日に私は上海浦東空港から合法的に出国して日本で休養していましたが、6月7日に中国国際航空の便で上海浦東空港に戻った時、中国浦東出入国国境防衛検査所の警官に入国を禁じられました。この入国禁止の決定には理由も法的根拠もなく、ただ上司の口頭命令だけでありました。私はもちろん不服として、中国国民の帰国帰郷の自由の権利を守るために、6月7日以降、6月17日、6月24日、7月2日、7月9日、7月16日、7月31日と連続して国際線の飛行機で7回帰国を試みました。

 そのうち4回は中国上海当局の指示を受けた中国国際航空会社、米国ノースウエスト航空会社が、日本の成田国際空港で違法に搭乗拒否し、中国国民の帰国権を侵害しました。3回は強制的な手段による、日本への輸送であります。

 私は中国国内の人権活動家で、「零八憲章」の署名者です。中国で長年中国国民の合法的権利擁護を支援し、地方政府の違法な権利侵害行為に断固反対し、庶民のために請願し、人権を擁護し、立憲民主主義を推進したがゆえに、一連の迫害を受けています。

 2009年2月15日、私は北京で上海市政府職員に拉致され、上海の秘密の場所で不法に41日間拘禁され、今回日本に来る前に解放されたばかりです。アムネスティ・インターナショナルもこの事件について声明を発表しています。私は中国の地に生まれた中国の政治家として、中国改造の責任を担う以上、各種の迫害、さらには投獄の苦難を受けなくてはならないことはよくわかっています。政治には国境がありますから、私は外国政府の救済を期待しません。

 しかしながら、思いもしなかったことに、中国上海当局の権力がその時日本まで伸びて、中国と米国の航空会社は日本国内にあって日本の法律を守らず日本の国家主権を尊重せず、中国地方政府の不法な命令に従い、4回連続で日本の成田国際空港で合法的な証明書と航空券を持つ乗客の搭乗を拒否しました。その目的は国民の帰国を阻止するという中国政府の役人の人権を侵害する犯罪行為への加担であります。

 中国の役人の横暴を私は理解できます。なぜなら、中国の役人は国内で鼻息の荒い金持のように、横暴であることに慣れているからです。ところが、私が思いもよらなかったのは、日本政府の係官のこの突発的な「対外関係」の事件に対する反応が鈍く、どうしていいかわからず、一部のやり方では私の人権を侵害し、同時に日本の尊厳を失わせしめたことです。

 私は6月17日と6月18日の成田空港において苦い経験をしました。6月17日午前、私は搭乗手続きを終えて日本の出国審査を通って、パスポートに日本政府の出国スタンプが押されて、中国国際航空CA158便で帰国しようとしました。しかし搭乗時に中国国際航空成田空港支店長の不当な搭乗拒否に遭い、帰国できなくなったので、空港の出国エリアで待っていました。

 当日の夜22:00ごろ東京入国管理局成田空港分局出国事務所の役人がパスポートチェックの名目で私のパスポートを受け取り、その後中国国際航空の職員と結託して、私の同意を得ずに勝手に私のパスポートの出国スタンプを取り消し、私が出国スタンプなしで空港出国エリアに留まっているという違法状態を作出し、私に対し日本に入国するよう要求しました。私がそれを拒絶すると、6、7名の警官を呼んで、私を強制的に日本に入国させようと試みました。
 しかし、私は強く抗議し、この役人の偽造行為を指摘して、中国上海当局が中国の航空会社と結託して違法に自国民の帰国を禁止し、人権を侵害している事実を指摘して、日本は外国人を強制的に日本に入国させることはできないと説明しました。

 私と日本の出入国審査官と警官とは空港出国審査所の事務室で夜中の1:00まで対峠しました。警官は事件の真相を知ると、全員撤収し、この「対外関係」の厄介事から手を引きました。結局、私は出国ロビーの長椅子で一夜を過ごしました。これは日本の歴史上はじめての事件かもしれません。出国スタンプのない人を空港の出国エリアに留まらせるということは人道的でもないし、日本の法律にも反しています。

 次の日の午前中、もう1人の係官が私に事務所で話をしようと嘘をついて、事務所の中をドアからドアへと案内し、最後に秘密の通路のドアを開けると、そこは日本国内の空港ロビーでした。このような詐欺的手法により私を日本に再入国させたのです。新しく法務大臣になられた千葉景子様には注目していただきたいと思います。

 日本は消費者の利益を重視し、商業道徳を重んじる国ですから、この種の商事契約・企業倫理に甚だしく違反する不法な搭乗拒否行為は、日本社会では絶対許されるものではありません。

 私の成田空港での何回かの苦い経験について、7月13日に当時の国土交通省大臣に書面で苦情を申し立てると、2日後に国土交通省国際航空課の係官から電話で調査すると連絡がありました。間もなく調査結果が出て、航空会社のやり方が間違っていたということでありました。しかし、国土交通省はいまだにこの間違った行為の処理をしていません。 

 たぶん、これらの会社が中国、米国の会社であり、また日本の係官が厄介に感じる「対外関係」であるためでしょう。もしそれが小国の航空会社であれば、恐らくとっくに処理されているでしょう。もちろん、小国の政府や航空会社に日本を見下す度胸はありませんから、主権国家の空港でこのように勝手気ままに、日本の基本的価値観や法律に反する行為はしないでしょう。

 国土交通省の担当官はいまだに処理結果に関する文書回答を苦情申立者である私に送ってきていませんが、これは行政不作為行為です。日本は法治社会であるのに、役人・係官はどうしてこんなに無責任なんでしょう? 新しく国土交通大臣になられた前原誠司様に督促していただきたいと思います。

 中国当局が無責任に自国民を強制的に日本に留まらせていることは、日本政府に多大な迷惑をかけていますが、日本政府自体の問題も露呈しました。政権交代の前に、海外のメディアと民衆に「日本政府の態度はどうか?」と聞かれ、私は、「現在は日本に政府はありません」と答えました。責任ある政府は外国の航空会社が主権国家の空港で勝手な振る舞いをすることを許さないし、隣国政府の違法行為に屈服することはありません。

 1人の中国国民が連続7回、自国政府によって入国を拒否されたということは、強大な中国政府が1人の弱小な自国民の帰国を恐れたということであり、国際社会を驚かせる前代未聞の醜聞です。日本、米国、フランス、ドイツ、台湾などのメディアが相次いでこの事件を報道し、中国国内の民衆はインターネットを通じて自国民の帰国禁止の事件を知り、続々と私の帰国行動の支持を表明しています。

 しかし、事件と直接関係のある中国政府、日本政府は沈黙し続けています。中国政府は緊張して慌ただしく建国記念行事の準備にあたり、1人の国民が国境の外に締め出されているなどという瑣事に構う暇はありません。当時、日本の麻生政権はすでに風前のともしびで、国内の厄介事が多すぎて、このような「対外関係」の厄介事には対処することができません。日本の政治家はみな権力争奪に忙しく、だれも成田空港で発生した中国の人権と日本の国家主権にかかわる問題に対処することを避けていました。

 私は中日関係と両国民衆の感情を理解しているので、この日本を巻き込んだ中国国民帰国禁止事件では高度の社会的責任感をもって非常に慎重に行動してきました。中国上海当局のようにばかげた極めて無責任で勝手放題な行動とは違います。

 私は第1回から6回までの帰国には日本の便は使わず、第7回に初めて日本の便を使いました。7回目の帰国は7月31日で、全日空便に乗って帰国し、上海当局により、強制的に上海浦東空港で一泊させられ、翌日ふたたび中国警察によって強制的に日本に戻され、日本に自発的に入国しました。私が何回も帰国を試みるのは、中国当局に自国民の帰国禁止という違法行為を止めさせるためであり、また国際社会に向けて中国当局の人権侵害の事実を明らかにするためです。

 8月、9月は、日本の選挙が行われ、新政府発足してまもないこと、および中国の国慶節前の緊迫した情勢を考慮し、私は自ら譲歩し、しばらく帰国行動を中止し、できるだけ中日間の外交紛糾になることの発生を回避しました。

 しかし、今、日本には新しい政府ができ、しかもそれは日本の民衆の支持率の非常に高い革新政府であり、「友愛」をかかげる、民生・民主・自由・人権を重視する新政府でありますから、あなたとあなたの内閣の大臣は中国当局が強制的に中国国民を日本に足止めしている事件に注目すべきであると考えます。

 中国の法律専門家が起草した「中国国民の帰国権保護に関する法律意見書」は2009年8月15日に公表されました。
 これは中国の法律に基づき、この中国国民帰国権侵害事件について行った法的判定です。その結論は、中国政府の自国民入国禁止行為が違法であるということであります。世界の大多数の国がすでに加入し、中国政府も署名した「市民的及び政治的権利に関する国際規約」第12条第4項には「何人も、自国に戻る権利を悪意的に奪われない」と定められています。

 私は、日本の法律にも人権保障規定があると思います。しかも、中国国民が外国に滞在するには2つの条件を満たさなくてはなりません。

 1、外国政府の同意、
 2、本人の同意

 であります。そして、中国国民が日本に滞在してもいいかどうかの決定権は、中国政府ではなく、日本政府にあります。したがって、中国当局が自国民の帰国を禁止する行為は自国民の人権を侵害するだけでなく、外国の主権も侵害しています。

 私は、最近、日本で中国国際航空会社と、米国ノースウエスト航空会社を日本の成田国際空港で中国上海当局の自国民の基本的人権侵害に協力し、適法な乗客馮正虎の搭乗帰国を拒否した件に対して、訴えを起こしました。

 東京地方裁判所は10月5日が公判、千葉地方裁判所は10月7日が公判です。私は日本の裁判所が公正な裁判を行い、私の基本的人権を守るとともに、日本の国家と法律の尊厳を守ることを期待しています。私は、すでに中国の弁護士莫少平氏に委任し、中国国内で中国上海当局を自国民の帰国を禁止したという違法行為で訴える準備をしています。

 私は日本政府が私の基本的人権を尊重し、自国の主権を尊重し、中国当局の自国民帰国禁止の違法行為に協力せず、航空会社の不当な搭乗拒否行為を禁止することを希望します。もし中国上海当局が再び無責任にも違法に私を日本に送り返したなら、日本政府は国際条約と中国と日本の法律により中国政府に対して責任をもって自国の中国国民を引き取るよう要求すべきであります。

 日本は世界で生活が最も便利で、最も安全なところです。私は日本の就労ビザを持っており、日本で快適かつ平穏に生活することができます。私の親族の大部分は日本におり、彼らは私が難儀しているときはいつも私を最大限支持し世話をしてくれます。

 今、私は帰国という困難な道を選びましたが、それは私が中国国民の自由に出入国するという基本的人権を守るためであります。私は、帰国後たぶん引き続き各種の苦難に直面し、平穏な生活はなく、また投獄のリスクがあることはよくわかっています。

 しかし、私は祖国の土地で中国に対する責任を履行し、他の中国国民と共に努力し、中国を次第に自由・民主・法治・人権尊重の国に変えていくことがやはり好きであります。

 私は、日中戦略互恵関係が本当に相互信頼を基礎とすることを希望します。日中両国政府が一中国国民の帰国禁止、日本強制滞在事件をどのように処理するかは、日中戦略互恵関係に対する試練であります。

 鳩山由紀夫総理大臣並びに内閣が思い通りに事が運び、全て順調でありますように。また、小沢一郎様によろしくお伝えください。

 皆様の益々のご健勝を祈っております。

                                           敬具

             

                                          在日の中国国民
                                          2009年9月27日

制作:2010年1月22日


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