ガガーリン資料2
祝勝会の様子

ガガーリンとフルシチョフ
ブヌコボ飛行場で抱擁するガガーリンとフルシチョフ


 4月14日、全世界はふたたび興奮のうちにモスクワ放送に聞きいった。この日、ソビエト連邦の首都は、地球周回飛行をなしとげた世界最初の宇宙飛行士ユーリー・アレクセービッチ・ガガーリンを迎えて、一大祝賀会を催したのである。

 ソビエトの国は、幸福にかがやき、活気にみちあふれて、最初の宇宙飛行家を歓迎した。さまざまな旗やのぼりの咲きみだれた大通りと広場では、幾千の人々が整列していた。かれらは手に手に春の最初の花束や、ガガーリンの肖像や、社会主義制度とその大きな創造力の勝利として歴史にのこるこの偉業をたたえるプラカードなどをもって、やってきたのである。

 ブヌコボ空港ビルの正面には、宇宙征服者ーーソビエト社会主義共和国連邦市民ユーリー・ガガーリンへの熱烈なあいさつの言葉を書いた横幕がかけつらねてある。ここにはまた、レーニン、フルシチョフ、ガガーリンの大きな肖像がかけてある。

 正午、英雄を迎えるために、ソビエト政府と共産党の指導者、モスクワ市とモスクワ州の勤労者代表が空港についた。
 12時30分、スマートな「IL」型4発機が空港に着陸した。これは、休養中のソチ〔カフカズの有名な保養地〕からわざわざ出て来たフルシチョフ首相をのせていた。

 演壇の上には、党や政府の指導者とならんで、英雄の妻ワレンチーナ・ガガーリナ、スモレンスク州からやって来たユーリー・ガガーリンの親類たちーー父、母、兄弟、姉妹がいる。ニキータ・セルゲービッチは、かれらと暖かいあいさつをかわす。

ガガーリンの乗った飛行機
ガガーリンの乗った飛行機「IL18」


 12時37分、興奮した声がたちまち飛行場にひろがったーー「飛行機だ、ガガーリンの飛行機だ」。7機の戦闘機に護衛されて「IL18」型機が空港にあらわれた。それには、世界ではじめて無限に遠い宇宙空間への道をきりひらいた人がのっているのだ。飛行機は敬意をあらわすためにモスクワの上空を一巡する。軍楽隊は、ユーリー・ガガーリンのために特に作られた歌曲『ようこそ、モスクワヘ』のメロディーを演奏する。

「着陸にやって来た!」カメラを空に向けていた新聞記者たちがさけぶ。
 場内にしかれた赤いじゅうたんのはじに、飛行機はとまった。ガガーリン少佐が足ばやにタラップをおりてくる。「ウラー」の歓呼と拍手のあらしがかれを迎える。

 赤いじゅうたんの上を100歩ばかりすすんで、ガガーリン少佐はニキータ・セルゲービッチ・フルシチョフの前に立つ。かれは、挙手の礼をして、報告するーー。

「ソビエト連邦共産党中央委員会第一書記、ソビエト連邦閣僚会議議長フルシチョフ同志!
 共産党中央委員会およびソビエト政府からあたえられた任務を遂行したことを、あなたに報告することは、わたくしの無上の喜びとするところであります。

 4月12日、ソビエト宇宙船『ウォストーク』〔東方〕号による人類史上最初の人間の宇宙飛行 は、みごとに成功いたしました。
 宇宙船のすべての機械と装置は、申し分なく正確にはたらきました。
 わたくしの気分は、きわめて良好であります。
 わが党と政府のいかなる新しい任務も、よろこんで遂行する決意であります。ガガーリン少佐」

 ニキータ・セルゲービッチは、帽子をとり、つよく、父親のように英雄に接吻する。かれはガガーリンをかたく抱擁し、ふたたび接吻する。
「おめでとう! おめでとうー」と、かれは宇宙飛行士に言った。

 ニキータ・セルゲービッチは、英雄を、ソ連共産党中央委員会幹部会具に引きあわす。かれらはみな、ユーリー・アレクセービッチに、心から祝いの言葉をのべる。それから、かれは母親、妻、父親、兄弟、姉妹と抱擁する。

モスクワに向かうガガーリンのパレード
モスクワに向かうガガーリンのパレード


 フルシチョフ首相とガガーリン少佐は、空港に参集したモスクワ市民の列の前を通りすぎる。それにともなって、力づよい「ウラー」の歓呼がわく。
 数分後、フルシチョフ、ガガーリン、その妻は、赤いバラで飾られた空色のオープンカーにのって、モスクワ市中にむかった。ブヌコボ空港から赤い広場まで、沿道は熱狂したモスクワ市民でぎっしりとうずめられている。自動車のパレードが通ると、幾十万のモスクワっ子が、さまざまな歓呼をあげるーー。
「宇宙の英雄、ばんざい!」、「共産党に栄光あれ!」

モスクワに向かうガガーリンのパレード
モスクワに向かうガガーリンのパレード(左がフルシチョフ、右が妻)


 赤い広場は、つねならぬ美しさだ。ここはソ連人の全国民的祝賀会場にあてられている。
 各連邦構成共和国の国章で飾られたクレムリンの城壁にそって設けられた特別席は、お客たちで超満員である。ここには、工場労働者代表、農業の先進的活動家、科学者と文化人、国家指導者と社会活動家、ソ連邦、ロシア連邦共和国、そのほかの連邦構成共和国の最高会議代議員、ソ連邦元帥たち、ソビエト軍の将軍と将校たちがいる。外交団のメンバーと諸外国のお客も参列している。

 はじからはじまで広場は群衆でいっぱいだ。首都勤労者の列の上は、旗や、レーニン、党と政府の指導者、ユーリー・ガガーリンの肖像の海である。
 と、広場にさかんな拍手が鳴りひびき、「ウラー」の歓呼がわきおこった。すべての参集者は、レーニン・スターリン廟の上の演壇に上がった共産党とソビエト政府の指導者、ユーリー・ガガーリン、その妻と両親を、熱狂して迎えたのである。

ガガーリン祝賀会
赤の広場で行われたガガーリン祝賀会


 つづいて、ガガーリン少佐のあいさつとフルシチョフ首相の演説がおこなわれた。

ユーリー・アレクセービッチ・ガガーリン少佐のあいさつ

 親愛な同胞のみなさん!
 親愛なニキータ・セルゲービッチ!
 党と政府の指導者のみなさん!

 まず第一に、わたしのような平凡なソ連のパイロットに、こんな大きな信頼をよせ、最初の宇宙飛行をおこなうという責任重大な任務をあたえられたことにたいし、わが愛する共産党の中央委員会、ソ連政府、全ソ連国民に、そしてニキータ・セルゲービッチに、心から感謝の念を表明させていただきたいと思います。

 宇宙空間へ出発するにあたり、わたしはわがレーニンの党、わが社会主義祖国のことを考えていました。光栄ある党とわがソビエト祖国、わが英雄的な勤労国民にたいする愛情は、わたしをはげまし、この偉業をなしとげる力をあたえてくれました。(拍手)
 わが国民はその英知と英雄的労働によって世界最優秀の宇宙船「ウォストーク」号とそのひじょうに賢明な、ひじょうに信頼度の高い装備をつくりあげました。

 出発から着陸まで、わたしは宇宙飛行の成功をすこしもうたがいませんでした。安心して宇宙空間の秘密をあきらかにできるこの宇宙船をつくったわが科学者、技師、技手、ソ連のすべての労働者諸君に、心から感謝したいと思います。
 さらにまた、宇宙飛行にそなえてわたしを訓練してくれたすべての同志諸君、集団全体に感謝したいと思います。(拍手)

 わたしの仲間の宇宙飛行士たちもみな、どんな時でもわが惑星をまわる飛行をおこなう用意があるものと、わたしは確信しています。(拍手)
 われわれはわがソ連の宇宙船にのって、もっと遠いコースをも飛ぶことになるだろうと、自信をもっていうことができます。
 わが愛する祖国が世界ではじめてこの飛行をおこない、世界ではじめて宇宙にはいりこんだことに、わたしはかぎりないよろこびを感じています。最初の飛行機、最初のスプートニク、最初の宇宙船と最初の宇宙飛行ーーこれが、自然の秘密を征服するためにわが祖国があゆんできた大きな道なのであります。(拍手)

 この目的にむかってわが国民をみちびいてきたし、いまも自信にみちてみちびいているのは、わが愛する共産党であります。(拍手)
 職業学校、中等工業専門学校、航空クラブ、飛行学校での自分の学習、生活、仕事の一歩ごとに、わたしはつねに党の配慮を感じてきました。わたしは党のむすこなのであります。(拍手)

 親愛な同志諸君、われわれ平凡なソビエト人にニキータ・セルゲービッチ・フルシチョフが示された父親のような大きな配慮を、わたしはとくに指摘したいと思います。親愛なニキータ・セルゲービッチ、宇宙空間からもどって祖国の大地に着陸した数分後に、わたしはあなたから飛行成功を祝うあたたかい祝電をいただきました。(拍手)

 親愛なニキータ・セルゲービッチ、わたし個人として、また仲間の宇宙飛行家たちを代表して、あなたに心からお礼申しあげたいと思います。(拍 手)
 われわれは、この最初の宇宙飛行をソ連共産党第22回大会にささげました。(拍手)
 あたたかい歓迎にたいして、親愛なモスクワ市民諸君に心から感謝します。(拍手)

 わたしは、諸君の一人一人が、レーニンの党の指導のもとに、わが愛する祖国の威信と繁栄のため、どんな偉業をもなしとげて、わが祖国とわが国民に栄光をもたらす用意をもつものと確信しています。(拍手)

 わが社会主義祖国ばんざい!(拍手)
 わが偉大な強力なソビエト国民ばんざい!(拍手)
 ニキータ・セルゲービッチ・フルシチョフを先頭とするソ連共産党とそのレーニン的な中央委員会に栄光あれ!(拍手)
(フルシチョフ首相の演説は省略)

ガガーリンとフルシチョフ
演壇に立つガガーリンとフルシチョフ

 出典:「人類最初の宇宙飛行 ソ連人間宇宙船の成功」(1961年5月、ソ連大使館広報課)

制作:2013年2月17日

●4月12日、宇宙飛行の様子(総論)
●4月13日、ガガーリンのインタビュー(「地球は青かった」の出典となった「イズベスチヤ」紙の全文)
●4月14日、祝賀会の様子
●4月16日、ソ連邦科学アカデミーでの記者会見
●幼少期から家族まで27歳の履歴書
●宇宙船「ボストーク1号」の構造
●宇宙飛行士の訓練方法

●NASAの誕生・宇宙開発の歴史
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