理想の駅

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1946年10月に創刊された『動く実験室』に描かれた理想の駅。以下、現代仮名遣いで引用します。
なお、イラストの右下は、外人も来ている簡易喫茶所。

 駅前の広場は、ローマのバチカン宮殿の廻廊を思わせるような廻廊があって、その上を高速自動車専用道路が走っている。廻廊と停車場の本屋との間には,、緑の芝生にチューリップ、金仙花などの咲いた花園があって、真っ白な水蓮の花を浮かせた泉水からは水がさわやかに噴き上げている。

週末旅行へ出掛ける家族連れが、泉水のそぱで、汽車待つ間のひと時を楽しんでいる。
専用路の下の商店街には、旅行案内所もあれば、旅行用具やおみやげ品、新聞雑誌を売る店舗もあれば、電報を取扱う郵便局も出張している。

芝生の真ん中のラウドスピーカーからストラヴィンスキーの管弦楽が流れている。汽車の発車もま近いと見え、発車のアナウンスに切りかえられた。本屋の入口は、タクシーや歩く人々でごった返している。

僕は人々の群れをわけて乗車広間へと足を運んだ。フラットスラブの円柱が蛍光色の光をはなって、金属張りの天井を支え、壁、窓、手摺が美しい線と影を組み合わせている。

光の流れる発車表示板が列車の発車を予告しているゴムモザイクを敷きつめた広間は、完全に旅客のざわめきを奪い取り、そこは人々の勣きの世界があるだけで、騒音からはおよそ縁の遠い世界である。