最低限の事実 of 北沢楽天の世界

最低限の事実

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洞尾吹三はしきりにお国自慢をして
「私の家の前の川は、清冽玉の如くで、向こうの森の間からは富士が見えるよ。暑いうちに遊びに来たまえ」

大ボラを吹いても、まさか60里もあるところを訪ねて来もすまいと、そのまま帰省した。
それに引き替え友達は……

洞尾の言葉を真に受け、見ぬ風景に憧れて60里の道をはるばると
訪ねてきたが、誰ひとり知る人なく

大骨折りで探し当ててみると、聞くとは大違いの荒家で

洞尾は「いや、川は泥水だがね、1カ月も雨がないと澄むよ。富士山か、そりゃ好晴(おてんき)の日に、あの松の頂上に登って望遠鏡で見ると見えるよ」