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19世紀のカメラ

(1)旅行携帯用カメラ・オブスクラ(複製)
  1835年頃 イギリス

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 ウィリアム・ヘンリー・フォックス・タルボットが作った携帯用のカメラ・オブスクラ(カメラ・オブスキュラ)。「カメラ・オブスクラ」はピンホールカメラと同じで、原理自体は古くから知られていたが、15世紀頃から、画家が風景絵画の下絵を書くために使われ始めた。
 
 タルボットは、カロタイプと呼ばれる現像技術(ヨウ化銀感光紙を使って写真のネガ像を作り、このネガを感光紙に焼き付けてポジ像を作るネガポジ法)を発明し、写真プリントの元祖となる。

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カメラ・オブスクラの原理(wikipediaより転載)

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タルボットと世界最初の紙焼写真

(2)木製ダゲレオタイプ・カメラ
  1839年頃 フランス

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 ダゲールがアルフォンス・ジロー社から1839年8月19日に発売した世界最初の市販カメラ。

 現存する世界最古の写真は、1826年、フランスの発明家ジョセフ・ニセフォール・ニエプスが撮影した。ヘリオグラフィと呼ばれるもので、アスファルトを感光剤として使い、石油とラベンダー油の混合液で洗い、硝酸で黒くさせたもの。ただし、露光時間が8時間もかかった。

 その後、ニエプスの研究を引き継いだルイ・ジャック・マンデ・ダゲールが、1839年、ダゲレオタイプ(銀板写真)を完成させる。銀メッキした銅板にヨーカ銀の感光膜を作り、水銀の蒸気で現像し、食塩水で定着させたもので、これが写真の発明。

 なお、フランス政府はダゲールの発明を即座に買い上げて公開したことで、カメラの開発競争が始まった。

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世界最古の写真(鳩小屋と屋根)

(3)フォクトレンダー ダゲレオタイプ・カメラ(複製)
  1841年 フォクトレンダー製(オーストリア)

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 ジョゼフ・ペッツバールがフォクトレンダー社から発売した世界最初の金属製カメラ。独自設計のレンズはF3.7と非常に明るかった。


(4)ピットビル湿板カメラ
  1860年、R.ジェフリー製(イギリス)

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 ダゲレオタイプの面影を残した湿板用カメラ。感光度が遅いため、シャッターはなし。露出はレズキャップの開閉で行った。

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明治時代の湿板写真

 1851年にイギリスのアーチャーが発明したコロジオン湿板法による湿板写真。ヨウ化物を分散させたコロジオンをガラス板に塗布して、硝酸銀溶液に浸したものが感光剤となる。日本では明治25年頃まで普通の写真館で使われた。1枚あたりの値段は、女性の月給に相当する5円もかかった。

(5)ファローフィールド乾板カメラ
  1878年、ファローフィールド製(イギリス)

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 毎回、感光剤を作る必要があった湿板に対抗して、1871年に発明されたのがゼラチン乾板。既製品を使うことで、カメラは格段に小さくなり、持ち運びもたやすくなった。乾板が工業生産されるようになった年に作られたので、製品名に「乾板」が入っている。 木製の折りたたみタイプのカメラで「組立暗箱」と呼ばれるもの。


(6)フォトスフェル
  1888年、フランセーズ写真商会製(フランス)

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 世界的な珍品カメラ。お椀のような突起(内部は木製で外部は金属で覆われている)の中に半円形をしたシャッターがある。


(7)2号コダック
  1889年、コダック製(アメリカ)


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 コダックが世界で初めてロールフィルムを使用したカメラ(「No.1コダック」)を発売したのが1888年。これは世界で3番目のロールフィルムカメラ。紙をベースにした100枚撮りフィルムが詰められて販売され、撮り終わったらカメラごと工場へ送った。


(8)ヘゼキール木製一眼レフ 
  1895年、A.ヘゼキール製(ドイツ)

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 蛇腹繰り出しによる焦点あわせが可能だった。

(9)ゲルツ・アンシュッツ・クラップ・カメラ
  1896年、C. P. ゲルツ製(ドイツ)

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 日本はもちろん、世界でも有名な報道用カメラの第1号機。薄手の木製で軽いが、丈夫に作られている。クラップ・カメラとは蛇腹などで折りたためるタイプのもの。ゲルツ・アンシュッツは1905年に頭文字を取ってアンゴーと改名される。


(10)ポケット・コダック
  1896年、コダック製(アメリカ)

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 文字通り「ポケットにも入ってしまうカメラ」の1号機。日中に装填可能なフィルムを使用した最初のカメラ。

(11)ル・パスカル 
  1898、ジャービー製(フランス)


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 世界的な珍品カメラ。世界最初のフィルム自動給装カメラ。動力はバネで、最初にフィルムを巻き上げておき、巻き戻しながら撮影していくタイプ。


(12)ヴェガ・マガジン・カメラ 
  1900年、ヴェガ製(スイス)

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 西洋のふいごのような三角形で、内蔵されている12枚の乾板を蛇腹の伸縮によって素早く交換できる。