深海底を走破する

ハイパードルフィン
3000mまで潜れる無人探査機ハイパードルフィン


 太古の昔から「海中」を進む潜水艦は存在していましたが、実は、「海底」を調査する技術というのは、近代になるまであんまり発展していませんでした。
 で、世界で最初に大がかりな海底調査が行われたのはいつかというと……特に裏付けがハッキリしてるわけではないけれど、どうやら1910年代初頭のようです。

世界初?の潜水筒
これが世界初?の潜水筒
 

 手元の資料によれば、第1次世界大戦(1914〜)を機に、深海底を調査する「潜水筒」が開発されたそうです。これはシモン・レークなる人物が発明したもので、圧搾空気により潜水服を使わないで水深1500mまで潜れたそうです。一応、理屈では9000m以上潜れるらしいですが、ホントかどうかはよく分かりませぬ。というか、シモン・レークって、どこの国の人間かもよく分かりません。

 ところで、世界最深部の調査は、日本水路部の測量艦「満州」が1925年10月3日にマリアナ海溝で9814.6mの測量に成功したことから始まったそうです(海上保安庁海洋情報部のサイトによる)。
 このときはピアノ線で測ったそうですが、現在では世界最深部はマリアナ海溝チャレンジャー海淵で10920m±10mと確定しています。
 
 で、1995年3月24日、日本の無人探査機「かいこう」がこの世界最深部への着底に成功しました。深度は10911.4m。1960年にアメリカの有人潜水船トリエステが到達して以来の快挙でした。

潜行前のトリエステ 
潜行前のトリエステ
(写真は米海軍のサイトより転載)

 
 ちなみに海中では10mで1気圧ずつ増えていきます。それがどれくらいの力かよく分からないので、写真で見てみましょう。1000mで、この通り、カップラーメンが見事に縮んでしまいました。10000mではどうなっちゃうんだろうね。

水深100mの圧力 → 水深1000mの圧力
左:水深100m、右:水深1000m
 


 さて、日本の誇る「かいこう」は非常に優秀で、10000m以上潜れる世界唯一の深海探査機でしたが、2003年5月に室戸沖で行方不明になってしまいました。まったく居場所が分からないので、今回はその功績を追体験です。
 

「かいこう」は1997年、沈没したロシアのタンカー「ナホトカ」や撃沈された学童疎開船「対馬丸」の船体を発見しています。2001年にはホノルル沖で沈没した「えひめ丸」の遺品回収にも成功しています。
 なかでも最大の功績とされるのが、1999年、海底3000mから国産ロケット「H2」8号機のメインエンジン回収に成功したことでした。これは『プロジェクトX』でも取り上げられたので、知ってる人も多いでしょ?

 1999年11月15日、宇宙開発事業団の国産ロケット「H2」8号機は、種子島宇宙センターから打ち上げられた4分後に第1段エンジンが異常停止、高度130kmから、小笠原の北西380kmの海域に墜落しました。
 第1段エンジンの大きさは、高さ約3.4m、直径約1.8m足らず。これを落下推定エリア10km×40kmの海底から発見するのです。たとえるなら、東京ドームの観客席も含めた床のどこかに落ちている3cmの物体を、富士山の頂上に立って探すのと等しい行為だそうです。

 それって……普通無理というか??

 その後、調査海域は26.5km×3.5kmまで縮小されましたが、困難なことには変わりありません。それでも見つけ出すって、本当に凄いですな。


 というわけで、JAMSTEC(海洋研究開発機構、旧海洋科学技術センター)へ行って、当時活躍した母船「かいれい」を見に行ってみたよ。

「かいれい」 「かいれい」の操作盤
これが「かいれい」と、操作盤


金比羅様
こちらが航海の安全を祈願する金比羅様

 金比羅は言うまでもなく香川県の金刀比羅宮からきたものです。
 ちなみに金比羅はサンスクリット語のクンピーラに由来します。これはガンジス川に住むワニを神格化した水神で、航海者たちの信仰の対象でした。江戸時代になって海運が発達すると、金比羅は全国に勧請され、日本中に信者が広がっていったのです。それがこの船にも祀られてるわけ。
 
 で、実際の捜索では、1999年11月27日、「かいこう」がエンジンと燃料タンクをつなぐ円筒状の部品を発見、続く第2次探査で、自力では動けない探査機「ディープ・トウ」がエンジン本体を発見するのでした。水深は2917m。1999年のクリスマス・イブのことでした。
 

 実は、同機構は、1996年にも、宇宙から帰還して小笠原沖に沈んだ極超音速飛行実験機「ハイフレックス」の海底探索をしましたが、このときは失敗しています。また、戦時中に高知沖で沈没した滋賀丸の探査も不首尾に終わっています。
 やっぱり海は広いな、大きいな、というわけですな。
 
 それにしても、行方不明になった「かいこう」はどこへ行ってしまったんでしょうか?
 「かいこう」はそれまで1000種近い深海微生物の採取に成功しており、新しい遺伝子を次々に発見していました。日本が生命工学で世界のトップになる可能性もあったのに、残念なことです。
 ま、もはやどうしようもないのですけど、ホント、海底調査ってば、予想以上に大変なのでした。

ナラクハナシガイ
日本海溝7400m地点で採取されたナラクハナシガイ
 
制作:2005年6月24日


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