幻の蒸気機関車を見に行く!

幻のSL
これが日本唯一の「幻のSL」だ!


 京都駅のそばに、梅小路蒸気機関車館というSL博物館があります。この博物館はJR西日本のもので、動態保存7両をはじめ、全部で18両のSLが保存されています。
 で、この博物館に、先日19両目の蒸気機関車が納入されました。

梅小路蒸気機関車館 梅小路蒸気機関車館
旧二条駅を移築した機関車館。扇形車庫や転車台などの設備が残存


 このSL「1080号」は明治時代、東海道線の列車増発にともなってイギリスから大量に導入されたもので、明治を代表するベストセラー機関車。けれど現在日本には1両しか残っておらず、しかも一般公開は約20年ぶりという「幻のSL」なんですな。

 そんなわけで、一般公開に先立って修復中の「1080号」を見てきたよ。

 日本で鉄道が開通したのは明治5年(1872)のことでした。その後、鉄道網は飛躍的に拡大していきますが、明治時代にはまだ機関車の国内製造はできませんでした。

 そこで、当時の鉄道省はSLの図面だけ国内で引いて、製造は外国のメーカーに発注していました。単純に輸入すればいいのではないかと思いますが、イギリスと日本では鉄道の軌道幅が違うため、そのままでは使い物にならなかったのです。

 機関車の製造はイギリスのネルソン社、ダブス社などが担当しました。もっとも多く生産したのがネルソン社だったため、この1080号はダブス社製にもかかわらず、「ネルソン」という愛称で親しまれました。

 明治34年(1901)に製造されたネルソンは時速80キロ近いスピードが出たので、東海道線・新橋〜神戸間の急行列車を牽引するなど、文字通り日本の主力機関車として大活躍しました。
 しかしながら大正時代に入ると、ようやく国産機の性能が向上し、ネルソンは小回りが利くよう改造され、美濃太田機関区など地方の支線で働くようになりました。

 昭和15年(1940)、鉄道省から日鉄鉱業に払い下げられ、鉄鉱石の輸送で活躍。国鉄がSLの運用を終了させた昭和50年(1975)12月以降も走り続け、昭和54年(1979)6月に約80年の現役生活を終了したのです。
 その後は栃木県佐野市の工場内で保管されてきたんですが、約20年前に公開されたきり、幻となっていたわけです。


 というわけで、このネルソンの細部を見ていくよ。まずは外観から。

ネルソンSL 梅小路蒸気機関車館
左側のコブは蒸気だめ。右側のコブは砂箱で、
空転防止のため車輪と線路の間にまく砂をためておく。右写真は砂の出口


梅小路蒸気機関車館 梅小路蒸気機関車館
(左)中央の丸タンクがシリンダー。その下、ピラミッド状のものは皿バネ(サスペンション)
(右)エアブレーキと、ブレーキの作動に使う圧縮空気を溜めておく空気だめ


 続いて運転席に潜入だ!

梅小路蒸気機関車館

(1)見送り給油器。シリンダーに機械オイルを注入する
(2)注水器。蒸気の流れを利用して水槽からボイラーに水を送りこむ装置(左右2つ)
(3)ボイラー圧力計。現在はヘクトパスカルを単位に使うが、当時はkg/cm3
(4)ブレーキ圧力計(右2つ)
(5)水面計。蒸気ボイラーの水位を外部から目視できるようにした水面監視装置
(6)石炭を投げ込む焚口戸。普通は横に開くが、これは上下に開く非常に珍しいタイプ
(7)アクセル。手前に引くと加速する。正式名称は「加減弁テコハンドル」
(8)テコ式の逆転機。前後させることにより前進と後進を切り替える

SL自動ブレーキ弁
空気圧を利用した自動ブレーキ弁(奥)と単独ブレーキ弁(手前)。自動ブレーキは車輌連結時に使う


 実はネルソン号の最大の特徴は、アクセルとブレーキが日本製と左右逆になっている点。まさに“外車”ならではで、かなり珍しいのです。ちなみに下の写真が国産のキャブ(運転席)の様子。
 
C11の運転席
C11の運転席。アクセルとブレーキが逆


機関車修繕票
機関車修繕票。1080号の機関車重量は48トンで、全長は11.4m

<以下マニア向け情報>

 このネルソンはもともと明治34年に「D9形式651号」として製造され、明治42年に「6270形式6289号」となり、大正15年に「1070形式1080号」となりました。この機関車の複雑な形式について書いておきます。
 大まかにいって蒸気機関車にはテンダー式とタンク式の2つあるんですね。

 ・テンダー式(上部に石炭、下部に水を入れた「炭水車」を連結)
 ・タンク式 (炭水車が連結しないもの)

 この機関車はもともとテンダー式「D9形式」の651号目として製造されたわけです。Dは動輪4軸という形式称号で、D9には次の4通りあります。明治42年の形式称号改正でそれぞれ名前が変わりました。

 日本のD9形式(全135両)
 ・英ネルソン製(50両)  →「6200形式」→後にタンク式に変更され「1070形式」┐
 ・英ダブス製(25両)   →「6270形式」→後にタンク式に変更され「1070形式」┴(合計49両)
 ・米アルコクック製(24両)→「6300形式」
 ・独ハノーバー製(36両) →「6350形式」

 
制作:2009年10月5日


<おまけ>
 SLの粉塵はひどいものですが、いかにすごいかわかる写真がこちら。下の3番、4番には動態保存の機関車が頻繁に止まるので、5番に比べ、すすで真っ黒。粉塵対策の眼鏡は機関士の必需品でした。
SLSL

<おまけ2>
 列車はブレーキをかけてもなかなか止まらないので、線路を一定区間で区切り(閉塞)、1つの閉塞区間に同時に2つ以上の列車が入れないようにしていました。閉塞区間への通行票が下の「通票(タブレット)」です。これも機関士の携帯品の1つ。
通票
通票

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