丙野家の大庭園
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丙野茂平治は大庭園築造のため近所の土地を買い占めたが、たった1軒の小さな工場が強情で、買収に応じない。丙野自身の交渉もついに不調に終わった。

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せっかくの大計画で善美を尽くした庭園も、工場から吐き出される煙でめちゃくちゃだ。丙野は大いにふさぎ込むと、トンチのある技師がその煙を噴火山に応用した。

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なるほど、庭園の築山が噴火山とは、いっそう景色が大きいと丙野は大喜び。工場主は足ずりして悔しがり、煙突の高さを高くした。丙野は負けずに築山を高くした。そして煙突がさらに高くなるいたちごっこ。

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温情主義の丙野は、会社の職工一同を自邸に招いて盛大な園遊会を開き、いちいち握手して喜ばせた。

丙野夫人も接待に大いに努めて、裏店(うらだな)の嬶(かかあ)と一緒におでんを食べると、嬶連中は夫人の華やかさに見とれている。

それから、例の工場の煙を利用した噴火山のある大庭園を見せてやる。

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職工の細君は、鍋釜と入れ替えて質入れした晴れ着を脱ぎながら、つくづく丙野夫人をうらやましがる。

「ダイヤを光らせておでんを食べりゃ珍しいかもしれないが、こちとらは、おでんなんぞちっとも珍しくない。庭園に噴火山とは贅沢だ」 と細君たちが同盟罷業(ストライキ)の尻押しをする。

「ストライキ? 情けにつけあがる不埒者めが」と怒る丙野。

「なんでも噴火山を見たので爆発したのだそうで」

「バカ、控えろ!」