帝国主義の時代、世界の開化が始まった!

インドネシア・ダニ族
現在、世界で最も原始的と呼ばれるインドネシア・ダニ族


 19世紀末から、世界を「帝国主義」が覆い尽くしました。
 列強による植民地の拡大競争で、まぁ一言でいえば「地球の陣取り合戦」。
 本音は市場の拡大や資源確保でしたが、さすがに正直に言うのははばかれるので、侵略を合理化するために使用されたのが「文明開化」や「啓蒙」という言葉でした。

 こうした言葉の背景にある思想は、

 ●社会は理想的な状態へ進化していくという「社会ダーウィニズム」(社会進化論)
 ●人種には優劣があるという「優生学」(選民思想)

 といったものです。

 まぁ、小難しいことはさておき、帝国主義をもっとも簡単に言えば、

《土人は未熟だから、先進国にいる人間がいろいろ教えてやる(そのかわり資源よこせ)》

 ということです。

 その帝国主義をたった1枚で表現できる写真を見つけました。

フィリピン人にラジオを聞かせるアメリカ人

 
 1920年代、まだ未開だったフィリピン人にむりやりラジオを聞かせるアメリカ人です。
 左下を見ればわかるけど、地元の子供たちは恐怖におののいています。そりゃそうだよ、見たこともない機械から音が出るんだから。想像を超えた悪魔みたいなもんです。
 そして、その土人の姿をあざ笑う背後の文明人がいいですよね。

 ちなみにフィリピンはアメリカの植民地化に抵抗し、米比戦争では数十万とも60万ともいわれる犠牲者を出しました。アメリカは抵抗集落を徹底的に抹殺することで有名でした。

米比戦争時の風刺画
米比戦争時の風刺画。「10歳以上の者は皆殺し」
(ウィキペディアより)

 
 結局フィリピンは1902年より全面的なアメリカの支配下に入るのですが、それから20年以上経っても原住民はバカにされた存在であることがわかります。
 
 問題はこうした劣等民を啓蒙させる文明開化が、ある時期「正義」と化してしまったことです。戦時はもちろんですが、平時も善意の下で、強制的に民俗・習俗を破棄させられていく、そんな時代が確かにあったのです。
 そして、それは今でも続いています。

 上のラジオの写真は今から80年前のものですが、こちらは現在の写真。インドネシア・イリアンジャヤのダニ族の絵葉書です。

ダニ族
こっちはカメラ


 この絵葉書を見て、きっと誰もが「土人だなぁ」と言って心の底で笑うのです。違いますか? 笑った人は、フィリピンの土人を笑う西洋人と同じメンタリティということです。

 
 日本では、未開の地だった台湾を占領し、文明開化を進めました。その成果は次のような写真で絶賛されていきます。

高砂族 → 開化後の高砂族
左が開化前の原住民「高砂族」、右が開化後


 20世紀初頭、日本では民族博覧会がしばしば開催され、土人たちを見世物にすることが始まりました。それを見て多くの人は思いました。
「未開人だから啓蒙しないと」
 もちろん、こうしたメッセージは、そのまま日本の植民地拡大を正当化していくのでした。

(余談ながら、アメリカがフィリピンを植民地化したのは日本に大きな脅威を与えました。地図を見ればわかるけど、フィリピンと台湾って400kmくらいしか離れてないんですよ)

台湾原住民
↑輝く日本大博覧会で「展示」された台湾原住民


 言うまでもなく、今日的な考えで言えば、民度を高めることは正しいことです。
「風土病で死ぬより、病院で治療しよう」「土器を使うより、食器を使おう」……
 しかし、その考えは実は帝国主義そのままなんですな。言われた方は大きなお世話ということです。

 かつて日本では「土人という言葉は差別語だから使うな」と言ってましたが、その言葉の陰にひそんでいた帝国主義的な考えに気づいていたんでしょうか?

パプアニューギニアのお面
パプアニューギニアのお面


 いずれにせよ、世界から珍しい風俗や風習はあっという間に消えていきました。今はどんな秘境に行っても同じだもんね。どこの土人だって携帯持ってるし。

 そして、「劣った民族」の啓蒙が始まって百数十年。今、世界では「ダイバーシティ」つまり「多様性」の意義が問われています。

 もちろんこの「多様性」とは通例は生物種のことを指すわけですが、そこに人間を含めても問題ないわけで。
 でも、人間の場合、文化の多様性はもう無理だよね、いったん破壊された習俗・風習はけっして元に戻らないから。多様性がないからこそ「多様性は素晴らしい」と言ってるわけで。なんか偽善っぽいですよね。

 そんなわけで、本サイト別館「世界民族博覧会」では20世紀初頭、世界に確かに存在していた奇習や風俗を写真で一挙公開します。
 文明は地球から土人や野蛮人を消し去り、その結果、めでたく「♪世界はひ〜とつ」になったのでした。


制作:2010年5月8日

<おまけ>
 上のような文章を書くと、今度は「かつて世界は多様だった」とか言い出す人がいるんですが、とはいっても同じ人間だから風俗は似てる部分も多かったんですよ。広範囲にわたる共通文化もいっぱいありました。「多様性」みたいな広い意味の言葉は使い方を間違えるとワケがわからなくなりますな。

ヘビ使い ヘビ使い
アフリカからインドにわたる広大な地域で存在していたヘビ使い

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