地球儀の誕生

直径22mの地球儀
直径22mの地球儀(20万分の1)
ちょうど、300km上空から見下ろした地球に相当


 世界最初の地球儀は、紀元前160年頃、ギリシャのクラテスによって作られたといわれています。
 しかし、現存する最古の地球儀は、1492年にドイツの地理学者ベハイムが作った直径51センチのもの。これは金属製で、ドイツ・ニュルンベルクのゲルマン国立博物館に保存されています。
世界最古の地球儀
ゲルマン国立博物館のサイトより

 日本に地球儀が伝来した正確な年代は不明ですが、天正8年(1580)には、すでに織田信長が地球儀を所有していたことがルイス・フロイスの『日本史』に書かれています。これは、信長が宣教師にどうやって日本に来たか地球儀の上で説明させたところ、その遠大なルートに信長はいたく感心したという話です。
 その後、天正19年(1591)には、天正遣欧使節が豊臣秀吉にヨーロッパ製の地球儀を献上しています。

 そして、日本に現存する最古の地球儀は、1700年にオランダで作られたもので、長崎県平戸市の松浦史料博物館に残っています。

 ちなみに皇室に初めて地球儀が献上されたのは、嘉永5年(1852)に水戸藩主・徳川斉昭が孝明天皇に贈ったもので、これは明治天皇の即位式で使用されました。
 樺太から台湾、朝鮮などの日本領は金泥で塗られていたといいます。
 写真右は斉昭自筆の献上文ですが、地球儀ではなく「大地国形」となっていることがわかります。
(「上大地国形表」は「おおちのくにがたをたてまつるひょう」と発音します。「上」は「奉る」という意味)

徳川斉昭が孝明天皇に贈った地球儀 徳川斉昭が孝明天皇に贈った献上文
献上された地球儀と献上文

 さて、江戸時代に入ってからは、国内でもさまざまな地球儀が制作されましたが、庶民が地球儀を知ったのは明治時代になってからです。寺子屋から小学校に代わり、ここで正式に授業で教えられたのです。
 このあたり、島崎藤村の『夜明け前』にハッキリと書かれてあります。

《新時代の教育はこの半蔵の前にひらけつつあった。松本までやって来て見て、彼は一層その事を確かめた。それは全く在来の寺小屋式を改め、欧米の学風を取りいれようとしたもので、師範の講習もその趣意のもとに行なわれていた。(中略)
 教師の心得べきことは何よりもまず世界の知識を児童に与えることで、(中略)
 単語図を教えよ。石盤を用いてまず片仮名の字形を教え、それより習字本を授けよ。地図を示せ。地球儀を示せ。日本史略および万国地誌略を問答せよの類だ》

万国地誌略
これが万国地誌略


 では、地球儀をどうやって教えたのか?

地球儀地球儀
これが庶民が初めて見た地球儀
 
 これが明治8年(1875)の『小学問答 地球儀之部』に掲載された地球儀です。
 問答という通り、本文では地球儀についてQ&Aで話が進んでいきます。

 Q なぜに地球儀と名つくるや?
 A 地球の形に模して作りしものなればなり。あたかも橙の如し
 Q 東西の中径(赤道の直径)は幾里なるや?
 A およそ3234里なり
 Q 南北の中径は幾里なるや?
 A およそ3223里なり


 といった具合です。
 3234里は1万2700km。実際は1万2756km。東西と南北の直径の差は11里(43.2km)ですが、実際は42.8kmなので、かなり正確といえます。

 さて、さらにQ&Aには、緯度は赤道を、経度は各国の首都又は天文台を中心に考えるとあります。日本の場合はもちろん東京で、北緯35度35分、経度0度とするとあります。なんと経度ゼロ!! 
 当時は世界標準時なんてなかったんですなぁ。

 その後、明治17年(1884)になって、東京麻布に仮経緯度原点が定められ、明治25年(1892)、麻布の東京天文台に経緯度原点が設置されました。

経緯度原点
経緯度原点

 この位置を正確に書いておくと、
 
  経度:東経139度44分40.5020秒
  緯度:北緯 35度39分17.5148秒

 となります。驚くべきことに、この原点は2002年3月まで使われていました。
 では、現在はどうやって原点を決めているのか? 現在の原点は世界測地系と呼ばれるもので、正確な位置は

  経度:東経139度44分28.8759秒
  緯度:北緯  35度39分29.1572秒

 なんですが、これはどうやって測っているんでしょう?
 実は、はるか数十億光年の彼方にある星からの電波を複数のアンテナで同時受信し、その到達時刻から精密に計測しているのです。
 
 その技術を"VLBI"(Very Long Baseline Interferometry:超長基線電波干渉法)と言うんですが、このメイン基地がつくばの国土地理院にあります。
 そんなわけで、ちょっと国土地理院に見学に行ってきました。というのも、2006年4月21日、国土地理院の内部公開が行われたからです。
 がしかし、予想以上に遠かった……。

 これが1200万分の1の地球儀。奥が20万分の1地球儀(冒頭の写真)。
地球儀
 

 こちら筑波基準点(日本の三角点の原点)
筑波基準点 
 
 そしてこちらがVLBIの超巨大32mパラボラアンテナ
32mパラボラアンテナ
 

 実はこのアンテナ、ものすごいスピードで動くんですよ。映像はこちら


 いや〜、これを見ただけでも感動。すごいな国土地理院!

制作:2006年5月1日


<おまけ>
 世界最古の天球儀は、1080年製のものがフィレンツェに残っているそうです。
 日本最古のものは、やはり松浦史料博物館に残っています。

海図の歴史と基礎/尖閣、竹島の測量図

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