予防接種はじまる

予防接種
予防接種は忘れずに


 明治3年(1870)に種痘(しゅとう)法が敷かれ、天然痘に対する予防接種が始まりました。
 森鴎外の『渋江抽斎』には、天然痘について次のように書かれています。

《種痘の術が普及して以来、世の人は疱瘡を恐るることを忘れている。しかし昔は人のこの病を恐るること、癆(ろう)を恐れ、癌(がん)を恐れ、癩(らい)を恐るるよりも甚だしく、その流行の盛(さかん)なるに当っては、社会は一種のパニックに襲われた》

 種痘は、牛の牛痘ウイルスを人間の上腕部に刺すもので、1796年、イギリスのジェンナーによって発見された予防法です。
 
 ところが、実際に予防接種が始まると、
「疱瘡牛の膿を飢えるのだから、牛になるぞ」
 というデマが広がったそうです。しかも、やっと説得して接種すると、善感したのを「伝染した」と泣き出す始末だったとか。

 もちろんこうした騒動も初期だけで、後には誰でも平気で予防接種するようになりました。
 ちなみにこれが種痘の証明書。
種痘済証
昭和15年の種痘済証


 なお、天然痘は、1980年5月8日、スイスのジュネーブで開かれた世界保健機関(WHO)総会において「撲滅宣言」が出され、地上から消滅しました。
 

※冒頭の写真は大正5年(1916)にコレラが大流行したとき、神楽坂の芸妓に予防接種中のもの

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