超マニアック資料公開!
太平洋戦争「幻の被害調査報告書」

幻の調査報告書
太平洋戦争「幻の被害調査報告書」

幻の調査報告書
1960年、経済企画庁が「国民所得倍増計画」を発表しました。この計画の策定に関わったのが、後に外務大臣となった大来佐武郎(おおきたさぶろう)という人物です。
経済企画庁は、もともとは戦後すぐの1946年に作られた経済安定本部が改組されたものです。言うでもなく、経済安定本部が設置された最大の目的は、戦争で荒廃した日本経済の復興にありました。
さて、ここで問題。
敗戦国が経済復興するために最初にすべき作業はなんでしょう?
答えは意外かもしれませんが、賠償金の減額なんですね。
ドイツにヒトラーが登場したのは、第1次世界大戦で支払うことになった賠償金があまりに巨額で、インフレが止まらず、国民の不満が爆発したからです。戦勝国は敗戦国に無理難題を押しつけるわけで、何とかして賠償金を少なくするというのが、経済復興に最も重要な作業なんです。
そんなわけで、経済安定本部の大来佐武郎は、賠償金減額のため、日本の戦争被害を詳細に分析するよう、部下に命じたのです。
調査は、昭和22年7月から昭和24年3月にかけて行なわれました。実際の調査は小川さんという官僚がほとんど単独で行ったようです。
実は、戦争被害の調査は昭和20年11月末に発足した「大東亜戦争調査会」が行うはずでしたが、なぜかこの組織はまともな活動をしないまま翌年には廃止されてしまいました。結局、まともな調査報告は小川さんのものが唯一となったわけです。
戦災の被害調査は、『戦争被害調査資料として、主に次の6点の文書にまとめられました。
1「今次戦争による国富被害算定方法」(昭和22年12月25日、活 版、178ページ)
2「我国経済の戦争被害」(昭和23年2月11日、活版、63ペー ジ)
3「残存国富と間接被害 附・純軍事的資産の喪失」(昭和24年1月 25日、ガリ版、59ページ)
4「太平洋戦争による我国の被害総合報告書」(昭和24年4月7日、 活版、200ページ)
※2と3に人的被害を加えたもの
5「広島、長崎に於ける原子爆弾に依る物的被害(附人的被害)」(昭 和23年6月1日、ガリ版、53ページ)
6「広島、長崎に於ける原子爆弾に依る物的被害算定方法(原稿)」 (昭和23年5月3日、鉛筆書き、209ページ)
1〜4は比較的現在でも参照することが可能ですが、5と6はほとんど見ることができません。というか、5と6は存在がずっと秘匿されてきたのです。どうしてかというと、GHQが原爆についての調査を一切禁止したからです。
6はそもそもメモ扱いだし、公開された5でさえわずか50部しか印刷されず、しかも大部分が配布されることもなく小川さんの自宅に退蔵されました。国会図書館にも被害地図以外は保存されていません。
そのまま戦後長期にわたって報告書は秘匿されてきましたが、1995年、『史料・太平洋戦争被害調査報告』として公刊され、初めて内容が世に知らされました。
さて、本サイトとでは、このわずか50部しか存在していない「広島、長崎に於ける原子爆弾に依る物的被害(附人的被害)」のオリジナルを独占入手することに成功しました。
そこで、その内容について公開していきます。「我国経済の戦争被害」のオリジナルも持っているので、こちらもあわせていつか公開する予定です。

こちらが「我国経済の戦争被害」
ここで、簡単に内容を書いておきます。
まず戦争全体の人的被害は、死亡・負傷・行方不明の合計が約235万人(うち死亡 約185万人)と推計されています。このうち、内地の被害が約67万人(うち死亡約30万人)、軍人軍属の被害が約186万人(うち死亡約156万人)。これは相当な過小評価の数字とされ、実際、現在では太平洋戦争の死者だけで310万人以上(海外の軍人軍属約210万人、海外の一般邦人30万、内地約70万人)とされています。
物的被害は、国富の総被害653億円で、これは関東大震災の被害の 約5倍。実際には軍艦188億、軍用機216億などがさらにかかるので、約8倍といえます。
●653億円の内訳
直接被害497億円(そのうち広島の原爆7億、長崎の原爆2.5 億)
間接被害156億円(スクラップ化、補修不足、疎開など)
この数字は当時の公定価格によるもので、闇経済など実勢経済は無視されてます。一応、おおざっぱな現在の実勢価格では全国で10兆円、広島1500億円、長崎540億円と推定で きるそうです。
参考ながら、国富の直接被害のうち7割程度が私有のものであり、結局被害を受けるのは民間企業と一般国民なんだということがよくわかります。
というわけで、戦争被害調査報告書を大公開!
しかしデジタル化するのは異常に大変なので、幻の「原爆被害」の総論部分だけでご勘弁。いつか全部公開できればいいですが。
参考までに、目次は次のようになっています。
| 戦争被害調査資料5(昭和23年6月1日) 「広島、長崎に於ける原子爆弾に依る物的被害(附人的被害)」 目次 第一 総論(今回公開するのはこの部分だけです) 第二 各論 1 建築物 2 道路 3 港湾河川 4 橋梁 5 林野 6 工業用機械器具 7 鉄道及軌道 8 諸車 9 船舶 10 電気及瓦斯供給設備 11 電信電話及放送設備 12 水道設備 13 所蔵財貨 14 雑 附録(別資料に依る原子爆弾被害統計その他) 1 広島に於ける建物被害 (1)被害程度別建物被害内訳 (2)建物構造別建物被害内訳 (3)教育機関の被害 2 広島に於ける被害見積額 3 原子爆弾による人的被害 4 広島に於ける被爆時の状況 |
制作:2009年8月15日
