あいきゃく

〔相客〕泊りあわせている客。
あいきょうがこわれる
〔愛敬が毀れる〕空気が白け渡る。
あいくち
〔合口〕気が合う仲。「あいつとはどうも合口だ」。「ウマ合」に同じ。
あいぐら
〔合鞍〕2人一しょに一つ馬へのること。
「一匹の駱駝(らくだ)をやとひて合鞍に三人等(ひと)しく打乗りて、」(仮名垣魯文「西洋道中膝栗毛」)
あいこでせえ
じゃん拳で両方が同じ紙なら紙、鋏(はさみ)なら鋏がでたときのはやしことば。今は「相子でしょ」。
あいしめ
〔愛し目〕秋波。ウインク。
アイスクリーム
高利貸のことで、「氷菓子」の洒落。「アイス」とも略す。
あいずり
〔相ずり〕共謀者。ぐるになって悪事をする人。
「その相ずりの尻押(しりおし)は(略)居所(ゐどこ)定めぬ南郷力丸、面ァ見知って貰ひやせう。」(河竹黙阿弥「青砥稿花紅彩画(あおとぞうしはなのにしきえ)ーー白浪五人男」雪の下浜松屋の場)
あいそづかし
〔愛想尽かし〕絶交するための憎まれ口や冷淡な態度。転じて勘定書のこと。
「宵にや真赤にさわいでいたが、朝の勘定で青くなる」と俗曲にあるように、ガッカリさせられるからである。
あいたい
〔相対〕むきあってすること。互に承知してやること。合意の上でのこと。「相対づく」は納得づく。「相対死(じに)」は心中、情死。「相対間男」は美人局(つつもたせ)。
あいなか
〔合中〕間仲。
「あんな嘘つきの奴はありません(中略)人の合中をつツつくひどい奴ですから。」(三遊亭円朝「怪談牡丹灯籠」)
あいのり
〔合乗〕いっしょに乗物に乗ること。また「合乗車」の略。
あいのりぐるま
〔合乗車〕2人乗りの人力車。戦後輪タクにこの現象が見られた。情人の乗客が多かったが、同性が用談その他を話し合いながら行く場合もあった。明治10年代、落語家立川談志が人気を博したナンセンス舞踊「郭巨(かっきよ)の釜掘り」には、「合乗幌(ほろ)かけ頬ぺたおッつけテケレツノパー」という一節があった。東京では明治末年亡びたが、永井荷風「十年振」には、「京都には今でも合乗の人力車がある。芸者とお客の合乗をして行くのを見ても、往来の人は別に不思議な顔もしない。」大正11年11月の話である。
あいばこ
〔合箱〕→「あいのりぐるま」
あいふだ
〔合札〕ものを預った証拠に渡しておく札。
あいぼう
〔相棒〕駕籠や「もっこ」をいっしょにかつぐ相手。前の者を「先棒」、後の者を「後棒」という。
「『それを云へば、おれだって同じ商売で、片棒をかついでゐるのぢゃあねえか。そのおれが斯うして働いてゐるのに相棒の権三が寝てゐるといふ法があるものか。』『相棒と云っても内の人は先棒だよ。ちっとは遠慮をするものさ。』」(岡本綺堂「権三と助十」)
あいまいや
〔曖昧屋〕料理屋や商家らしくみせかけている淫売屋。曖昧宿。
あいみじん
〔藍微塵〕藍いろの微塵縞(タテヨコ共に同一の2色の糸を1本おきに織り合わせてつくった細かな縞の略)。遊び人などのやや崩れた人態(にんてい)に合う。例えば源氏店に「さんげさんげ」の下座で登場する向う疵(むこうきず)の与三郎。
あいむなぐら
〔相胸倉〕共に胸倉を取り合う格好。
あいやど
〔相宿〕一つ部屋へいく組かの旅人が合宿すること。
あおい
未熟。人格・技量・言動の各面に使う形容。蜀山人の狂歌に「まだ青い素人義太夫黒がって赤い顔して黄な声を出す」というのがある。
あおっぴげ
〔青っ髭〕髭が濃いため、常に深くそり、そのあとが青くなっていて凄く見える顔。
あおづめ
〔青爪〕爪の青い馬。
あおのく
〔仰向く〕「あおむく」の江戸なまり。
あおり
〔煽り〕駕籠のタレ。
あおんぞ
青しゃびれている(青い不景気な顔の人)。
あか
〔赤〕赤ン坊。
あか
〔垢〕舟へ溜まる水。
あかいきれ
〔赤い切れ〕遊女。「赤いきれとねたよ」
あかいしきせ
〔赤い仕着〕刑務所で着せられる赤い衣服。刑務所へ行くことを、「赤い仕着を着る」という。
あかえりざかり
〔赤襟盛り〕赤い半襟(はんえり)をよろこぶ少女時代。
「十五六の赤襟盛に在(あ)る事で、唯奇麗事(ただきれいごと)でありさへすれば好いのですから、」(尾崎紅葉「金色夜叉」)
あがき
〔足掻き〕始末。都合。「あがきがっかない」「あがきが悪い」などいう。
あかだんご
〔赤団子〕灸(きゅう)の児童語。
アカチア
アカシヤの木のこと。
あがったり
〔上ったり〕ガックリと駄目になること。繁昌しなくなること。「お手上り」(今日ではお手上げという)も同じ。駄目になった人を、あがったり屋。
あかにし
〔赤螺〕ケチな人のこと。落語の主人公に「赤螺屋」という屋号の男がいる。
あかばしゃ
〔赤馬車〕赤く塗った乗合馬車。「また九段坂、本所緑町通ひの赤馬車は、両国橋際に停車して、本所行或は万世橋行と呼びて客を招き、」(明治30年代の「東京名所図会」)
akabasha赤馬車
あがりぐち
〔上り口〕落塊(らくはく)する気配のみえて来たとき。
あがりなまず
〔上り鯰〕花柳界で派手につかった人が、おちぶれるのを、鯰が死んだ姿にたとえた。
あきだなのえびす
〔空店の夷〕ひとりでニコニコしている人のこと。「空店」は空家。→「たな」
あきだるかい
〔空樽買い〕空いた樽を専門に買って歩く商売が昔はあった。
あきのなみ・はるのいろ
〔秋の波・春の色〕わかいおんなが憎からずおもうひとへの目づかい、表情の形容。色目。流し目。ウインク。秋波。
あくざもくざ
〔悪作妄作〕さまざまの悪事。「あいつは悪作妄作をつくした」などという。また、悪雑藻屑(あくぞもくぞ)というと、さんざんにいう悪口の意味になる。
あくしょう
〔悪性〕不実な。薄情な。
「殿御(とのご)殿御の気が知れぬ、気が知れぬ。悪性な悪性な気が知れぬ。恨み恨みてかこち泣き」(長唄「京鹿子娘道成寺(きょうがのこむすめどうじょうじ)」)
あくち
〔悪智〕悪智恵(わるぢえ)。
あくぬける
〔悪抜ける〕改心する。
あくば
〔悪婆〕老婆ではなくて、悪事を働く中年以上の女。妖婦毒婦のごとく色じかけでない場合をいう(芝居用語)。莫連女(ばくれんおんな)。「於染久松色読販」(おそめひさまつうきなのよみうり)の土手のお六、「処女翫浮名横櫛(むすめごのみうきなのよこぐし)」の切られお富、「蟒於由曙評仇討(うわばみおよしうわさのあだうち)」のうわばみお由、「善悪両面児手柏」(ぜんあくりょうめんこのてかしわ)の姐妃(だっき)のお百。
あけ
〔明け〕夜明け。遊里では明け方まで飲んでいて、明け方の廓内をひやかすのを「明けをひやかす」という。
あげあぐら
〔上げ胡座〕普通の胡座でなく、左方の足を右足の上へことさらにのせてかいた胡座。凄味のもので、歌舞伎の強請場(ゆすりば)に見られる姿。
あけすけものを遠慮なくいうこと。何でもかくさずにいうこと。あけりゃんこ。
あげだいきん
〔揚代金〕遊女を買う金。宝暦、天明の頃の吉原第一流の遊女は、昼三(ちゅうさん)といい、昼夜三歩の女郎のことで、昼三をあげづめにすると1両2分、片仕舞(かたじまい、昼なり夜なりだけあげる)は1歩2朱。古川柳に「春宵一刻価(あたい)三歩なり」「噛みしめて見れば三歩は三歩なり」。
あけに
〔明荷〕旅行用の一種のつづら。
あけばん
〔明番〕勤務時間が終ること。→「ばん」
あげまき
〔総角〕振分髪(ふりわけがみ)を左右に分けて結ぶ髪形。
あごつき
〔顎付〕食事つきということ。
あさがえり
〔朝帰り〕遊女屋を翌朝、客が立ち出でて自宅へかえること。後衣(きぬぎぬ)の別れを惜しむ姿なども見られた。
あさがお
〔朝顔〕男の小便所の便器をいい、天井から光線をいれる窓も、朝顔の花を逆さにしたようなので、そういった。昔、駅の停夫が発車のときに振った鈴(新聞売や煮豆屋もつかった)も、同じく朝顔の花に見立ててそういう。
あじ
〔阿字〕真言宗で、阿字(宇宙不滅の玄理の象徴)をみる法。阿字観。
あしあがり
〔足上り〕奉公人が主人の家を追い出されること。「足が上がる」ともいう。東京ですたれ、大阪ではかなり近くまでつかわれていた。
あしだかみち
〔足高道〕爪先(つまさき)上りの道。
あしだまり
〔足溜り〕滞在。
あしなみちょうれん
〔足並調練〕兵隊が隊をつくってやって来るときのように足音を揃えて大ぜいが来ること。「足並調練で通った」
あしぶみ
〔足踏〕訪問。
あじろ
〔足代〕足場。足がかりのために組み合わせた丸太。
あしをちかく
〔足を近く〕しばしば。せっせと。
「そりゃお前さんが足を近く来たから二階で名を知られ、今更となり恥をかくのさ。」(河竹新七「籠釣瓶花街酔醒(かごつるべさとのえいざめ)」八ツ橋部屋の場)
あずまげた
〔吾妻下駄〕日和下駄の丸みのあるもので、畳表(たたみおもて)を付けたもの。婦人用。
あずまコー卜
〔吾妻コート〕明治時代にはやった、和服用の婦人の外套(がいとう)。そのころおなじ用をなすものにあった被布(ひふ)より長く、ラシャやセルでつくられた。
aduma吾妻コート
あだあだしい
〔仇々しい〕仇っぼい。
あだもの
〔婀娜者〕仇っぽい女。
あたりぼう
〔当り棒〕すりこぎのこと。縁起をかつぐ花柳界や芸界では、する(損する)ことを嫌って「すずり箱」を「あたり箱」、「するめ」を「あたりめ」といった、その一つ。
あたりめ
→「あたりぽう」
あっけらかん
ポカンとしていること。あんけらけん。あんけらかん。
あっこうもっこう
〔悪口帽頭〕わるくち。もっこうは悪口にかさねて、語呂の上で意を強めたもの。→「あくぎもくざ」
あづちまちのくすり
〔安土町の薬〕千金丹のこと。大阪安土町信山家伝(かでん)だった。明治10年代の夏になると、東京の町々を洋傘をさした男たちが、節面白くこの薬を売り歩いた。啖咳溜飲(たんせきりゅういん)下痢にきくといった。
あとげつ
〔跡月〕先月。あとのつき。今なら「ちょうど3年前」というところを当時は「ちょうど3年あと」といっていた。
あとばら
〔後腹〕事業などの失敗で、いつまでも身にふりかかる金。「あとばらが病める」
あとびっしゃり
〔後びっしゃり〕オドオド後へ下がること。後(あと)びしょり。
あとぼう
〔後棒〕後肩。「先棒(さきぼう)」の対。→「あいぼう」
あとめそうぞく
〔跡目相続〕その家の当主の死後又は隠居した後、代ってその立場をつぐこと。
あとやさき
〔後や先〕しどろもどろ。
「女の文のあとや先、まゐらせそろではかどらず」(竹田出雲他「仮名手本忠臣蔵(かなでほんちゅうしんぐら)」祇園町一力の場)
あなっぱいり
〔穴っ入り〕女道楽。女あそびにこること。
あにさん・あねさん
〔兄さん・姉さん〕大正初年まで東京には「にいさん・ねえさん」という頭音を延ばした呼び方はなかった。上へは「おあにいさん・おあねえさん」「あにさま・あねさま」「おあにいさま・おあねえさま」、下へは「あにい・あねえ」と変化しはしたが、あくまで「あに・あね」であり「にい・ねえ」ではなかった。「あんちゃん」も「あにさん」の崩しであろう。
この種の江戸人・東京人の呼び方を覚えるのに好適な「ひいじいさん」という小唄がある。「ひいじいさん、ひいばあさん、おじいさんにおばあさん、お父(と)っつぁんにおっ母(か)さん、おじ御(ご)におば御(ご)、息子に嫁御(ご)、お兄(あにい)さんに弟御(ご)さん、姉に妹、孫曾孫(まごひこ)やしゃご、いとこにはとこ、おい御(ご)にめい御(ご)、御養子、御養女、あとは御縁がちと遠い」
あねさまかぶり
〔姉さまかぶり〕手拭を額(ひたい)にあてて、その左右を頭へのせるかぶり方。
あのこや
〔あの娘や〕花魁(おいらん)が禿(かむろ)を呼ぶことば。
あばあば
さよならの児童語。あばよ。
あぶたま
〔油卵〕油揚(あぶらげ)を細く切り、玉子をかけてかきまわし、あまく煮たもの。吉原にはじまったたべもの。
あぶら
〔油〕おせじ。油をかける。「油じゃないが、じつにえらい」「油すぎるよ」などという。
あぶらむし
〔油虫〕人にたかっておごらせること。廓のひやかし客をもいう。
あぶれ
〔溢〕商売がないこと。「きょうはあぶれた」などという。
あまだい
〔甘台〕甘味の台の物という意味。前田雀郎の川柳に「甘台の客代筆をたのまれる」。そういうケチな遊びゆえ、遊女にもバカにされて、手紙の代筆をたのまれたという句で、よく甘台の感じがでている。→「だいのもの」
あまっちょ
〔阿魔女〕江戸の下級な人たちのことばで、わかい女を悪意的に呼んで、こういう。
あみのぼんぼり
〔網の雪洞〕灯が消えぬよう風除(かざよ)けの網がつくられてある手燭(てしょく)。
あめ
〔飴〕飴をしゃぶらせる、つまりわざと負けてやること。
「ナニ此の盲将棊(めくらしょうぎ)め。太吉(たき)なざァ、一番糖(あめ)をねぶらせると、本気で勝ったつもりで居る。」(式亭三馬「浮世風呂」)
アメとう
「アメリカ唐桟(とうざん)」の略。
あめふりかざま
〔雨降り風間〕雨の日、風の日。「雨降り風間にはついあいつのことをおもいだすんです」
アメリカごけ
〔アメリカ後家〕夫が出稼ぎをしている妻。単に別居している妻をもいった。
あや
〔綾〕面倒な点。
あやどる
〔綾どる〕十字にかける。「襷(たすき)十字に綾どって……」
あやまりこうじょう
〔謝り口状〕謝罪状。
「それを又謝り口状を云ってよこすなんざァほれてるてえものは妙なもんでねえ。」(三遊亭円朝「松操美人生埋(まつのみさおびじんのいきうめ)」)
あゆみ
〔歩み〕「歩み板」の略。
あゆみいた
〔歩み板〕渡るためにものの上に渡す板。舟から岸へ渡す板も、畳のしいてある寄席で客席の歩く所の板も、歌舞伎で両花道を使う場合の仮花道も(東の歩み)、本花道と仮花道を客席後方でつなぐ板をもいう。
あらあら
〔大略〕あら方。あらまし。大てい。
あらいかた
〔洗い方〕詮議。探索。調査。→「かた」
あらいざらい
〔洗い浚い〕すっかり。根こそぎ。
「ここの内の洗ひざらひ、釜の下の灰までおれのものだ。」(瀬川如皐(せがわじょこう)「与話情浮名横櫛(よわなさけうきなのよこぐし)ーー切られ与三郎」源氏店(げんじだな)妾宅の場)
あらいながし
〔洗い流し〕釜やおはちを洗うとき、ついていて流れ出る飯粒(めしつぶ)。
あらうち
〔荒打〕あら壁を塗る段階。
あらきだ
〔荒木田〕荒木田土。元、東京都下荒木田産の赤土で、粘着力があって、壁や瓦葺(かわらぶき)の下にもちいる。
あらくま
〔荒熊〕昔、一人は顔を墨で塗って四つばいになり、一人は竹の棒を手にしてそばに立ち、「丹波の国から生け捕りました荒熊でござい」と呼んで歩く乞食があった。古川柳に「荒熊は乞食の中のつらよごし」。
arakuma荒熊
アラビヤうま
〔亜刺比亜馬〕男根の大きい人をこのように呼んだ。
「自分の亜刺比亜馬を棚へ掲げておいてか。」(梅亭金鵞(ばいていきんが)「滑稽立志編」)
あらまさ
〔粗理〕「あらまさめ」の略。荒い柾目(まさめ)。
あらみ
〔新刀〕新しくきたえた刀。
「犬嚇(いぬおどし)とも知らねえで、大小さしてゐなさるからは、大方新身の胴試(どうだめ)し、命の無心と思ったに……」(河竹黙阿弥「三人吉三廓初買(さんにんきちさくるわのはつがい)」大川端庚申塚の場)
あらわれこぐち
〔顕れ小口〕露見する端緒。悪事の分かる糸ぐち。
「それでは片時(へんし、少しの間)もすて置かれぬ、自分の悪事の顕れ小口でございますから、」(三遊亭円朝「怪談乳房榎(ちぶさえのき)」)
ありあけあんどう
〔有明行灯〕夜明けまでともしておく行灯。
ありがた
〔有形〕在来あった形。「有形より小さいが」という風につかう。
ありっきり
あるったけ。
ありていに
〔有体に〕見聞したとおりに。包み隠さず。
ありに
ななめに。ハスに。
「上の釘一本をありに打ちせえすりやァ(三遊亭円朝「名人長二」)
ありまつ
〔有松〕「有松絞り」の略。
ありまつしぼり
〔有松絞り〕愛知県知多郡有松町で産する木綿の絞り染。
ありもの
〔有物〕特別に他から用意しないでも自分が所有するところのもの。ありあわせもの。「有物で間にあわせよう」
アリャアリャ
火事場へ駈けつける仕事師や見舞の江戸っ子が、景気をつけて走りながら叫んで行く掛声。
ありゃりゃんりゅうと
〔アリャリャン竜吐〕火消が火事場へ駈けつける勇しい形容。アリャリャンは「アリャアリャ」と同様掛声で、竜吐は火を消す道具。大きな匝(はこ)の中に押上げポンプの装置をし、その上に取り付けた横木を上下して、匝の中の水をはじき出すようにしたもの。竜吐水(りゅうとすい)、竜こしともいう。
あるへいぼう
〔有平棒〕
有平糖のような棒の意味で、今日も理髪店の店頭に立てられている看板。石井研堂「明治事物起原」は「武江年表」明治4年4月西洋風髪剪所(かみはさみどころ)を引き「右の棹(さお)へは、朱、白、藍色の左巻といふ塗分にして立る」とあるを説明して「アルヘイ棒にて(中略)もとは皆高さ五六尺のものを大道に立ておきしこと、当時の画にて知らる。この看板は、西洋の理髪師の原始は医師にして、紅白色の纏ふは人身の動脈静脈を表わし、即ち医師の看板より転用されしものなりと、坪井氏の〔看板考〕に見えたり」。有平(豊臣時代につたわった菓子で、白砂糖と飴とを煮つめてつくったもの、ポルトガル語alféloaの転訛)の感じに似ていたので、このようにいった。
あわせものははなれもの
〔合わせ物は離れ物〕元々別々のところに育ったもの同士がそったのが夫婦ゆえ、緑がなければまた離婚するのも当然だという意味。
あわゆき
〔泡雪〕玉子の白味を泡だて、塩砂糖で調味したもの。
あんい
〔安意〕安心。
あんけんさつ
〔暗剣殺〕悪い方角の意味から変って、あっては具合の悪い人のいる方角。また災難にあう方へゆくこと。「暗剣殺にむかった」
あんこうぎり
〔鮟鱇切〕鮟鱇形ともいう。竹でできた花いけの一種。あくびがたという別名もある。
「鮟鱇切の水に埃(ほこり)を浮べて小机の傍(かたえ)に在り、」(尾崎紅葉「金色夜叉」)
あんころ
〔餡ころ〕表でころび、泥だらけになること。どろんこ。
あんにゃもんにゃ
分からずや。
あんねえ
〔姉え〕→「あにさん・あねさん」。古川柳に「姉(あんねえ)は女郎、弟は角兵衛獅子」というあわれな句がある。
あんばいしき
〔塩梅しき〕「塩梅」に同じ。
あんぽつ
〔箯輿〕上流の人々や病人、または葬礼の輿(こし)の代用で、四方竹の網代漆塗(あじろうるしぬり)で、引戸がついている。あんだともいうが、あんだは板を台にして、へりを竹で編み、竹でつるしたそまつな輿で、病気の囚人などをのせた。あおた。
あんぽんたん
〔安本丹〕バカ。うすのろ。
あんまこう
〔按摩膏〕肩の凝りにきく膏薬。3寸ばかりの大きさで黄色い紙に塗られている。按摩代用の意味で今日でもある。
あんまとり
〔按摩取〕按摩のこと。古川柳に「関取のうしろに暗いあんま取」。取という言葉を2つつづけて、力士と按摩の姿の明るさ暗さを対照させた句である。
あんも
〔甘餅〕あんころ餅の児童語。