いあいごし

〔居合腰〕居合(剣道の一派。坐ったままで素早く刀を抜き、敵を斬り倒す技術で、崎林重信創案)をするときの(ような)腰つき。
いいかかったこと
いいがかり。
いいしゅう
〔貴顕衆〕高貴の人々。紳士。
いいたて
〔言立て〕口実。
いえみまい
〔家見舞〕新宅祝い。落語の「こいがめ」は、「家見舞」とも題している。
いかい
おびただしい。はなはだしい。
いかけやのてんびん
〔鋳掛屋の天秤〕さしでがましい人。ですぎた人。いかけやの天びん棒は両端へゆくほど長く太く、棒の先が普通の荷をかつぐ綱のあるところより出過ぎている。いかてん。
いかさま
〔いか様〕なるほど。左様。
いかな
いかに、いかなるに同じ。なんという。「いかなおとなしい人でも」とか、「いかなこった」という風につかう。
いかもの
〔以下物〕ごまかしもの。昔は、将軍へお目見得のできない軽輩(けいはい)をお目見得以下、さらに略して以下ものといった。転じてそれがろくでもないものの意味となった。→「ごけにん」
いきぐみ
〔意気込〕勢い。いきごみとは今日もたまにいうが、いきぐみは江戸なまり。
いきごとすじ
〔意気事筋〕恋愛関係。
いきづえ
〔息杖〕駕籠屋の突いて歩く杖。これを突いて行きつつ、息の調節ができたゆえにいう。
いきなりさんぼう
〔行きなり三宝〕投げやりにしておくこと。「あいつはいきなりさんぼうだ」
いきにんぎょ
〔生人形〕等身大にこしらえた見世物の人形で、活けるがごとくにみえるゆえ、生人形となづけた。安本亀八、山本福松などが、その造り手として名高かった。
いきぶし
〔生節〕ごく新しい木の節。
いきれ悪く
むし暑い状態。「草いきれ」「人いきれ」
いきれる
うだること。空気が熱くなること。
「襖(からかみ)を閉切(たてき)っていきれるからこう枕元に立って立番(たちばん)をしてゐるので、」(三遊亭円朝「松操美人生埋(まつのみさおびじんのいきうめ)」)
いくさば
〔戦場〕戦線。
いくせのおもい
〔幾瀬の思い〕いくつもいくつもの瀬(急流)をわたる思い。やっとの思い。
いくらか
〔幾固か〕かなりに沢山あるという場合を、今日ではむしろ少ない方の意味に取れる「いくらか」で表現した。
いくらかくら
いくらいくら
いけ
〔生……〕極度の。はなはだしい。憎悪・軽蔑をこめた強意のため、頭につけることば。「いけ騒々しい」「いけ図迂図迂(ずうずう)しい」「いけぞんざいな」「いけぞんぜえ者」「いけっ太(ぶて)え」「いけしゃあしゃあ」「いけ好かない」
いけすのこい
〔生洲の鯉〕いけすのなかの鯉はいつ殺されるか分からないということからでて、世間の移り変りをいう。
いけどし
〔いけ年〕いい年。「いけ年をしやがって」
いけぶね
〔括船〕釣船の底に水がたたえてあって、釣った魚をそこへ投じ、活かしておくところ。
いざ
〔紛紜〕ゴタゴタ。もめごと。いざこざ。「少しイザがあったんでネ」
いざきん
躄の睾丸(いざりのきんたま)の略。地にすれ切っているという所から、すれっからしの人をいう。
いさみはだ
〔勇肌〕鳶人足などをいう。俠気。
いざんまい
〔居三昧〕坐りよう。「居三昧をただして(坐り直して)」
いしうすげい
〔石臼芸〕多芸だが、みなくわしくないことをいう。
いしがき
〔石垣〕石崖(がけ)。
いしきかいゆ
〔違式戒諭〕規則を破った人を教え、さとすこと。
いじきたな
〔意地汚な〕食欲だけでなく、女あさりの形容にもつかう。
いしゃっぽう
〔医者っぽう〕医者のこと。江戸っ子が悪意でなく、ややおどけて医者をよぶ言葉。「土佐っぼう」「会津っぽう」の類。
いしやのひっこし
〔石屋の引越し〕荷が重過ぎるというしゃれ。
いしゅ
〔意趣〕遺恨。怨み。「意趣返し」はしかえし。「意趣斬り」は意趣をもって人を斬ること。
いじょう
〔以上〕五節句や具足開きなどの式日に登城して、将軍家にお目見得できる、すなわち「お目見得以上」の略。→「いかもの」。
「一万石以上を大名と云ひ九千九百九十石以下御目見得までを旗本と云ひ、御目見得以下を御家人(ごけにん)と云った。」(岡本綺堂「江戸に就ての話」)
いじょく
〔居職〕自分の家にいてやる職業。例えば、彫金師とか、袋物をこしらえる人とかいう風にである。
いしをだく
〔石を抱く〕昔は、拷問のとき重い石を膝に抱かされた。膝が破れて血を見ることがある。
いじんかん
〔異人館〕西洋人の家。
いすかのはし
〔鶍の嘴〕諸事万事行き違ってやろうとおもったことが駄目になること。鶍という鳥のくちばしはくいちがっているゆえにいう。
「それからといふものはする事なす事鶍の嘴、」(三遊亭円朝「名人長二」)
いすり
強請(ゆすり)の江戸なまり。
いせのつぼやのかみたばこいれ
〔伊勢の壷屋の紙煙草入〕参宮土産の紙製の安価な煙草入。壷屋は、その専門販売店。先代木村重友口演「小金井小次郎」千葉県船橋市の大神宮にもでて来る。四世小金井芦洲(昭和23年末歿−先代)は、原地には同様の店が2軒並んでいて、その各自が「本家の隣りに贋物(にせもの)あり」と店頭に大書していたと、やはり「小次郎伝」の鹿沼の粂吉が丹波屋伝兵衛の許へ行く伊勢道中のくだりでいった。
いたいぼう
〔痛い棒〕昔は牢屋で拷問のとき、両手を後へ廻して棒と一しょにしばり上げて責めた、そのことをいう。
「まだ其頃は旧幕の時分に痛え棒を背負(しょ)ひ」(河竹黙阿弥「霜夜鐘十字辻筮(しもよのかねじゅうじのつじうら)」)
いたがえし
〔板返し〕小さい厚紙の表紙と裏表紙のようなものの間に、さまざまの草花模様などがかいてあり、この表表紙と裏表紙を軽く指でおさえてひらいたりとじたりすると、中の絵がクルクル変るおもちゃ。上野や浅草の公園や、祭礼、縁日などで売っていた。他に、屋根をふきかえることをも、いう。
いたごと
〔痛事〕金がかかりすぎたこと。「これは痛事だった」
いただく
不快にさせること。
いたちのみち
〔鼬の道〕ゆききをしなくなったこと。鼬がゆく先を突っ切ると不幸なことがあるという。「近ごろはとんといたちの道で、お立ち寄り下さいませんねえ」
いたちのめかざし
〔鼬の目かざし〕手を目の上に上げ、遠くを見ること。
いたみしょ
〔痛所〕からだの痛む部分。
いたりせんさく
〔至り穿鑿〕スミからスミまでしらべ上げること。
いちご越後
(えちご)のなまり。
いちごうとっても
〔一合取っても〕最々下級の禄をとっても武士は武士であるという意味。
いちじき
〔一食〕1回分の食事。1日2食を「二じきですます」といった。
いちずいに
〔一図意に〕一図に。ひたすらな心で。
「良人(おっと)を思ふ一図意に屏風のもとまで忍んで来ました。」(三遊亭円朝「粟田口霑笛竹(あわだぐちしめすふえたけ)」)
いちだいじんしょう
〔一代身上〕一代で築き上げた財産。
いちぶへん
〔一分片〕一分(25銭)と少し。「一分片ばかりもっている」
いちぶんがたつ
〔一分が立つ〕士族(武士出身)のことばで、男が立つ。面目が立つ。
いちまいかんばん
〔一枚看板〕ナンバーワン。昔の寄席の入口には高く招き行灯がかかげられていたが、そこへ大てい3、4人の花形の名がかかれるのに、特別にお客をよぶバリューのある芸人のときは、たったひとりの名のみが筆太(ふでぶと)に行灯へもポスターへもかかれた。
itimai一枚看板
いちまつ
〔市松〕「市松縞」の略。
いちまつじま
〔市松縞〕黒と白とたがいちがいに碁盤縞(ごばんじま)のように並べた模様で、佐野川市松(享保から宝暦ごろの上方役者で、たびたび江戸へ下り、女形として好評だった)が「高野山心中」の小姓粂之助で、その袴(はかま)にはじめてこの模様をつかってから、はやった。
いちもんあきない
〔一文商い〕小さな商売。
いちもんふつう
〔一文不通〕目に一丁字(いっていじ)もない意味。無筆(むひつ)。
いちらつ
〔一埒〕一件。「この一埒がつかないといけない」
いちりゅうまんばい
〔一粒万倍〕一と粒まいた種から、それが成長し、何層倍かの実がえられること。酒をつぎ過ぎて方々へこぼれ、ちらばった酒のしずくを、一粒の種が万倍にみのった光景に見立てていう冗談もあった。
いっかのがれ
〔一か遁れ〕一時逃れ。
いっきうちのなんじょ
〔一騎打の難所〕山と一騎打(いのちがけ)のおもいで越さねばならぬけわしい危険な道。
いっきだち
〔一己立〕ひとり立ち。一個が「キ」になまった。
いっけん
〔一件〕あの。例の。問題の。話題になっている所の。評判の女などにもつかう。
「おらあ上野の一件と思って影を隠したが、それぢゃあ比企(ひき)の一件か。」(河竹黙阿弥「天衣紛上野初花(くもにまごううえののはつはな)ーー河内山と直侍」入谷村蕎麦屋の場)
いっさんまい
〔一三昧〕一心。一事に集中した心境。
いっしょういちだい
一世(いっせ)一代のなまり。
いっせんじょうき
〔一銭蒸汽〕明治の中頃以後、隅田川をゆく小さい蒸汽船で、永代橋・吾妻橋間と吾妻橋・千住間とあり、船中には説明入りでエハガキや赤本を売りに来る行商人があった。はじめ1銭均一でこの名があったが、太平洋戦争の前に廃されるころにはもちろん1銭ではなかった。
いつぞは
いつかは。いつぞやは。
いっち
一ばん。殊に。とりわけ。「あの女がいっちいい」
いっちょこ
〔一猪口〕一杯。「一猪口さし上げたいなあ」
いつづけ
〔流連・居続け〕色町で一夜明かした遊客が翌日もかえらず遊びつづけること。
「いつぞや主(ぬし)の居続けに、寝巻のままに引寄せて、たがひに語る楽しみの」(新内「明烏夢泡雪(あけがらすゆめのあわゆき)ーー浦里時次郎」)
いっぽん
100両。
「塩噌(えんそ)の銭にも困ったとこから、百両(いっぽん)ばかり挊(かせ)がうと、損料物(そんりょうもの)の振袖で役者気取りの女形。」(河竹黙阿弥「青砥稿花紅彩画(あおとぞうしはなのにしきえ)ーー白浪五人男」雪の下浜松屋の場)。
「百目」「一つ」ともいう。金額をあらわにいわない都会人の神経から、江戸時代には金の数え方に関するおびただしい隠語ができた。たとえば「半分(50両)」「片手(5両)」「千疋(びき)(2両2分)」など。しかし、「三つ」といっても必ず「300両」とは限らない。3朱、3両、30両、3000両というふうにその場その場の条件次第で単位は違う。
いっぽんどっこ
〔一本独鈷〕仏具の独鈷(とっこ)に似た模様を織り出した厚地。琥珀(こはく)織及び博多織帯に多い。→「けんじょうはかた」
いとおり
〔糸織〕縒織(さおり、ねじって強くした糸で織ったもの)の絹織物。
いとだて
〔糸立〕タテを麻糸、横を藁(わら)で織った莚(むしろ)。旅行などに日除(ひよけ)、雨覆(あまおい)としてもちいる。「色彩間苅豆(いろもようちょっとかりまめ)」の与右衛門、「田舎源氏露東雲(いなかげんじつゆのしののめ)の光氏、「三人吉三廓初買(さんにんきちさくるわのはつがい)」大詰のお嬢吉三がまとっている。ともに、雨雪をしのぐと同時に人目をもさけようとしていることがわかる。
いどばたかいぎ
〔井戸端会議〕長屋の神さんたちが、共同でつかう井戸のそばで世間ばなしをすること。井戸は、明治中期以後は共同水道に変ったが、井戸端会議のことばはその後もつかわれた。
いとまさ
〔糸柾〕木材の木理(きめ)の糸のようにこまかいもの。
いな
→「いなかっペえ」
いなかっペえ
〔田舎っペえ〕田舎もの。略して「いな」ともいった。江戸人が地方人をさげすんでいうときのことば。→「ひゃくしょう」
いなせ
〔鯔背〕勇み肌。鉄火(てっか)。語源は、日本橋魚河岸の威勢のいい人々が髷(まげ)を鯔の背の形にゆったことにある。
いなり
〔居形〕その職業らしい住居と服装。
「玄関がまえでも医者居形(いしゃいなり)で、これまでこけをおどして来たのよ。」(三遊亭円朝「鏡ケ池操松影(かがみがいけみさおのまつかげ)ーー江島屋怪談」)
いぬおどし
〔犬威し〕犬をおどかす役にぐらいしか立たない刀。伊勢屋稲荷に犬の糞が江戸の名物であった時代、のら犬は明治中期まで東京に少なくなかった。
「犬威(いぬおど)しでも大小を伊達にさしちやあ歩かねえ。」(河竹黙阿弥「三人吉三廓初買(さんにんきちさくるわのはつがい)」大川端庚申塚の場)
いぬしし
猪(いのしし)のなまり。「いぬししァ豆くってホーイホーイ」
いぬのかわばた
〔犬の川端〕川っぷちは寂しく人通りがないゆえ、犬が通ってもたベものが落ちていない。そのように途中で飲食をしないで、どこかへ行くことをいう。略して「きょうはイヌカワだよ」。
いのこり
〔居残り〕支払いができないで、遊女屋や待合へのこっていること。落語の「居残り佐平次」のような豪のものもある。
いのこりめし
〔居残飯〕「居残り」がたべるひどいそまつな食事。
いばりをつける
〔威張をつける〕いばってみせること。「意張をつけるなア後(あと)にして、」(仮名垣魯文(かながきろぶん)「西洋道中膝栗毛」)
いまがに
いまだに。
いまさか
〔今坂〕「今坂餅」の略。
いまさかもち
〔今坂餅〕餡(あん)を包んだ楕円形の、紅や緑に着色して、焼板の上で焦目(こげめ)を付けた餅。ようかんや大福と同じようにごく大衆的な菓子だったから、落語家の芸名にも、明治時代の古今亭今輔の門人には、餡古楼(あんころう)今坂があった。
いまとうせい
〔今当世〕今の時代にピッタリという意味。ニュールックにもあたる。
「今当世の身装(みなり)だ」などという。鏑木清方「明治の東京語」に「古くは今当代と云っている」。
いまどやき
〔今戸焼〕台東区浅草今戸で焼いた火入(ひいれ)などのそまつな瀬戸物。福助やおかめや猫など。器量の悪い女のこともいった。「橋場今戸の朝煙」と邦楽にあるは、この今戸焼を焼く煙である。
いみ
〔忌〕80日間の喪(も)。「忌中(いみちゅう)」
いもしょせい
〔芋書生〕書生をののしる言葉。下宿で芋ばかりたべている奴という意味。
いもすけ
〔芋助〕百姓をののしることば。ものにうとい人。
いもむしころころ
〔芋虫ころころ〕大ぜいつながって芋虫のはうような恰好(かっこう)をして歩く女の子の遊戯。
いりかわ
〔入側〕書院造りの座敷と縁側との間にある一間幅(いっけんはば)の通路。
いりかわつき
〔入側付き〕「入側」のついた造作。
いりざけ
〔煎酒〕酒、醤油、鰹節を加えたものをいって、さしみや膾(なます)の味付けにつ
かうもの。
いりひ
〔入樋〕水の入口や吐口(はきくち)にある樋(とい)。
いりふねのクロス
〔入船の十字架〕港へ入って来た外国船の西洋人。みなクリスチャンで胸に十字架をさげていたから、そういった。
いりめ
〔入費〕費用。
いりやまがた
〔入山形〕
iryamagataという形が入山形で、袖口を両方ひっくり返したときなど、この形になるので、「袖を入山形にして」といった。
いりわけ
〔事情〕わけ。理由。
いれごみ
〔入込み〕男女混浴。男女一しょに入るお湯。
いれずみなおし
〔再刺〕前科二犯。昔は一犯ごとに腕へ懲罰の刺墨をした。それを消すために、ことさらに灸で焼いた者さえある。
「お前もおれも押借(おしがり)で、二度まで墨が入ったからは、どうで始終(しじゅう)は斬られる体。」(河竹黙阿弥「天衣紛上野初花(くもにまごううえののはつはな)ーー河内山と直侍」入谷村蕎麦屋の場)
いれぶつじ
〔入れ仏事〕仏の供養につかう費用の意味だが、費用ばかりかかって利益の少ない場合にもいう。
「裸でやっても二十と三十掛けねばならぬ、まことにそれは入れ仏事。」(河竹黙阿弥「人間万事金世中(にんげんばんじかねのよのなか)」)
いろあるはなはにおいうせず
〔色ある花は匂い失せず〕天性の美人は、初老にちかくなっても残んの色香がただよっている。元の意味は、美しい花は盛りを過ぎてもいい香りがなかなか消えない。
いろきのゆみ
〔色木の弓〕塗ってある弓。
いろけづら
〔色気面〕いろっぽい顔立ち。
いろどりする
〔色取する〕よろしく見つくろう。
「お母(っか)さん何か一寸お飯物(まんまもの)を色取してどうか……」(三遊亭円朝「松と藤芸妓(げいしゃ)の替紋(かえもん)」)
いろのなかだち
〔色の仲立〕情事の仲介。
いろのなかやど
〔情交の仲宿〕好いた同士を密会せしめるところ。温泉マークではなく、私的に恋びとたちのあうのに部屋を貸してやること。
いろめえた
〔色めえた〕色めいた。色っぽい。浮ついた。
「今はかうしてゐるものの、囲(かこ)はれ者とは表向、枕かはすはさておいて、色めいたことはこれほどもなく……」(瀬川如皐(せがわじょこう)「与話情浮名横櫛(よわなきけうきなのよこぐし)ーー切られ与三郎」源氏店(げんじだな)妾宅の場)
いわくつき
〔曰附〕因縁つき。
いわしのあたまもしんじんがら
〔鰯の頭も信心柄〕鰯の頭でも自分の信心次第で効(きき)めがある。近頃は、「信心から」として、鰯の頭でも一心に信じて祈ることから御利益があるという風に解している。
いんぎ
縁起(えんぎ)のなまり。
いんぎょう
〔印形〕実印、認印など。
いんじゅん
〔因循〕ハキハキしないこと。「あいつは因循している」という風につかう。
いんず
〔員数〕数のことをいう。
「落せし金の員数といひ、おのれが仕業(しわぎ)と認めしゆゑ、」(河竹黙阿弥「富士額男女繁山(ふじびたいつくばのしげやま)ーー女書生」)
いんだら
淫乱でだらしのない人。円太郎馬車をなまって、エンダラ馬車といったのと、のちには意味がまじりあった。
いんちゃんてれす
淫乱でデレスケ。好色な人をののしっていう。元は外国タバコの名。
いんのくそでかたき
〔犬の糞で仇〕いんはいぬのなまり。わずかなことをうらまれ、つまらぬ所で復讐されること。
いんぷく
〔陰服〕物忌み。人の死後、殺生や肉食を初七日までつつしむこと。
「七日の間は陰服といって、田舎などではエラやかましくって、とんぼ一つ鳥一つ捕ることが出来ねえ。」(三遊亭円朝「菊模様皿山奇談」)
いんりょく
〔引力〕引立て。
「羽振のいい渡辺織江の引力でございます。」(三遊亭円朝「菊模様皿山奇談」)
いんろう
〔印籠〕楕円形の三重か五重の小さい美しい箱。左右のハシに緒締(おじめ)、根附(ねつけ)をつけて帯にはさみ、丸薬(がんやく)や当座薬(とうざやく、イザというときにすぐつかえる薬)を入れた。江戸時代の礼服の装飾品(アクセサリー)で、梨地蒔絵(なしじまきえ)、螺鈿(らでん)、堆朱(ついしゅ)の加工品が多い。
「一つ印龍一つ前、これ助六が前渡り、風情なりける次第なり」(河東節「助六由縁江戸桜(すけろくゆかりのえどざくら)」)