のうさつかき

〔納札書〕千社札(せんじゃふだ)を専門にかく書家。一種、独特な筆太(ふでぶと)の書風がある。
のがけしょうぞく
〔野掛装束〕野駈(ピクニック)用の服装。
のきらんぷ
〔軒ランプ〕各戸の軒先に苗字などかいてだしていたガラス(四角のが多かった)のランプ灯。
noki軒ランプ
のけざま
〔仰様〕仰向(あおむけ)。のけぞった形。
のしめ
〔熨斗目〕熨斗目とは、練貫(ねりぬき)の一種で、経(たて)は生糸、横は練糸(ねりいと)をつかって織り、無地で、袖の下と腰のあたりにのみ、縞をあらわしたもの。江戸時代には士分以上の者の礼服として、麻裃(あさがみしも)の下に着用した。この熨斗目を派手にデザインした男性の衣服があり、今日でも浪曲師が高座用に使用してやはり熨斗目と呼んでいる。
のぞきのてぬぐい
〔覗きの手拭〕瓶覗(かめのぞ)きの手拭の略。瓶覗きは、紺屋の藍瓶(あいがめ)をちょいとのぞかせて染めただけの薄浅黄(うすあさぎ)の手拭。
のだァこと
勝手な熱。のたこと。
のだいこ
〔野幇間〕花柳界に籍があって正統の芸名を持ち、諸芸に通じているような存在でなく、ただ口から出まかせをいって客を取巻くもぐりの幇間。落語「干物箱(ひものばこ)」「王子の幇間(たいこ)」へでて来るのがその代表で、芸名は一八が多い。平助という名のは、「ますみ平助」という実在の人で、初代三遊亭円遊はモデルに使った。
のたる
もだえる。のた打つ。
のっけ
最初。のけ(仰)の音便(おんびん)という。
のっぺりくっペり
くっぺりは、語呂の上からのっぺりへそえたことば。
のづら
〔野面〕平気な顔。しゃあしゃあとしていること。「野面でいるのはひどい」
のでんちょうはん
〔野天丁半〕大道でやるばくち。
のどをふっきる
〔咽喉を吹っ切る〕音曲をやる初期の人が、一ど猛練習に声を枯らし、のちに今度はよい発声法にちかい声のでて来ることをいう。
ののさん
神や仏や日や月。のんのんさま。児童語。
のぼせかえる
〔逆上せ返る〕頭がクラクラする。
のみか
〔飲家〕酒家。愛酒家。
のみぬけ
〔呑ぬけ〕底なしに酒をのむこと。
のめずりこむ
入り込む。ふらふらとすべりこむ。
のめり
下駄の前の方の裏面をななめに切って造った形。くだり。
のりあいぶね
〔乗合船〕多人数が共に乗る船。いわゆるオムニバスであって、歌舞伎舞踊「乗合船恵方万歳(えほうまんざい)」にはこの風俗がよく伝わっている。
のりいれ
〔糊入〕米の粉を入れてこしらえた杉原紙(すぎはらがみ)。
のりかけ
〔乗掛〕「乗掛馬」の略。宿場の駄馬(だば)1頭に、人1人と荷20貫とを乗せて運んだ、その馬のことであるが、転じて「乗掛で行く」といえば、その駄馬へ乗って行くの意味。
のりじみ
〔糊染〕血がしみたことをいう。今日の歌舞伎では残酷だといって血汐の使用が大へんやかましいが、大正中頃までは芳年(よしとし)の錦絵のごとく血みどろの演出があり、凄惨そのものであって、血糊(ちのり)、糊紅(のりベに)などといわれた。
のれんつき
〔暖簾附〕その店の暖簾にかけてもきわめつき。その店で一ばんの人気と実力のある人。
「それとは違って鳥屋の暖簾附のお亀はね、此奴(こいつ)は一寸婀娜(あだ)っぽい女で、」(三遊亭円朝「松操美人生埋(まつのみさおびじんのいきうめ)」)
のれんをわける
〔暖簾を分ける〕分店を持たせること。
「江戸の商家にとって暖簾は軍隊の聯隊(れんたい)旗のごとく重要なもので、また大正震災以前の紺暖簾をかけ列ねた商店街は絵であった。暖簾の生地は、あれは何だったらう。恐らく木綿に違ひない。が、手触りは、まるで麻のやうにゴツゴツとしたものだった。紺一卜色に染めた真ン中に、丸に大とか、山形に利とか、それぞれ屋号の一字を白く染め抜いただけの意匠だが、商家では不思議に真新しい暖簾を年の暮に掛け替へる習慣があった。空ツ風の吹きすさぶ師走の町に、紺の匂のプンプンする暖簾が、冬の日を受けて深々と垂れさがった姿は、我々町人の子の目には、いかにも春を待つ心持にふさはしいものだった。(中略)と云っても、毎年新調されるものと思って貰ふまい。いいものを永く使ふといふのが、旧家の誇りであった時代のことだ。一度新調した暖簾は、五年、十年、繕(つくろ)ひ繕ひ使用に堪へる間は使ひ通す。小僧に来て、何年かの間勤め上げて番頭になって、主人に新店(しんみせ)を持たせて貰ふのを、暖簾を分けると云ったくらゐ暖簾を尊んだ時代のことだ。殊には一銭二銭の薄い利をはじき出すのが商法の商ン人(あきんど)が、毎年暖簾を新調する などといふ贅沢(ぜいたく)は許されない。が、そのまた年代を食った、紺の色がすっかり晒(さら)され、折り目に山のはひった暖簾を老舗らしく静かに垂れた店構へといふものが、また一種風情(ふぜい)のあったものだ。」(小島政二郎「蜜蜂」)
のろけっくら
〔惚気っ競〕のろけあうこと。のろけッこ。
のんこのしゃあ
平気で恥ずかしがらない。平気でずうずうしいこと。落語「錦明竹」の聞き違えのおかしみの中に「何をいってものんこのしゃあ」というのがある。
のんの
乗ること。児童語。