〔根〕原因。「あのことを根に持って……」などという。
ねあし
〔寝足〕ながいこと長距離を歩かず、すっかり歩行に弱くなってしまっている足。また、くたびれきって早くは駈けられない足をもいう。→「ねごえ」
ねうり
〔値売〕相当の価値で売ることをいう。「急ぎのことで値売をしているわけにいかん」
ねぐさい
〔寝臭い〕しじゅう寝てばかりいて体臭がにおうこと。
ねこ
〔猫〕芸者のこと。猫といったのは、三味線の皮が猫だからで、仮名垣魯文がはやらせた。髭(ひげ)の官員(役人)を髯の見立てで鯰(なまず)と呼び、鯰に猫の戯れる図は、明治ポンチ絵にじつによく見られるところのものであった。小唄に「猫ぢゃ猫ぢゃとおしゃますが、猫が下駄はいて杖ついて絞りの浴衣でくるものか」。また、巾着切(きんちゃくきり)の小僧のことをもいった。現代語でなら、「チャリンコ」。
ねごえ
〔寝声〕(邦楽などで)長く修練をおこたっていたためにだらしのなくなってしまった声。→「ねあし」
ねこぎ
〔根こぎ〕根からそがれてしまうこと。根こそぎ。
ねこじたい
〔猫辞退〕ほんとうはほしいのをことわること。「猫の魚辞退」の略。
ねこのひゃくひろ
〔猫の百尋〕猫のはらわた。よれよれに疲れた帯を「猫のひゃくひろのような帯」といった。
ねこぶし
〔猫鰹節〕猫にやる粗末な鰹節。
ねこみざしき
〔寝込み座敷〕人がねている座敷。
ねこもちゃをのむ
〔猫も茶を飲む〕あんな下らないやつも人並に茶をのむ。生意気だ、笑わせるという意味。
ねこをかぶる
〔猫を冠る〕ほんとうはガラガラな人が、わざとおとなしそうに見せかける。猫っかぶり。
ねじかね
〔捻鉄〕鉄の棒をねじったような形をしたかりんとう。
ねずみこくら
〔鼠小倉〕鼠いろの小倉。(木綿糸を織合わせ、博多織に似る小倉産の帯、袴(はかま)用の織物)。
ねずみじゃがた
〔鼠蛇形〕鼠地へ白で蛇形を抜いた模様、手拭や浴衣の模様に多かった。蛇形は「まとい」にある籠目をちらした図案で、大井川などの沿岸にみられる蛇籠(じゃかご)を模様化したもの。
ねずみなき
〔鼠なき〕口をすぼめて鼠の啼き声に似た声をだし、売女が客を呼び入れなどするときにもちいるもの。大名の女中も下々(しもじも)を真似て、鼠なきをした。
「元日や、主の笑顔を見初(みそ)めてそめて、人に語らず鼠鳴きして、嬉しい春ぢやないかいな。さうぢゃえ」(小唄「元日や」)
ねにふしとらにおきる
〔子に臥し寅に起きる〕午前零時(子の刻)に寝て午前4時(寅の刻)に起きる、つまり正味(しょうみ)3時間くらいしか寝ないようにして働けという戒(いましめ)。
ねん
〔念〕思念。ものおもい。執着。願望。思慕。祈念。「念をつく(念を押す)」「念を使う(心配する)」「念をかける(おもいを寄せる)」「念を残す(執念が残って思い切れない)」「念が切れない(気になってならない)」「念がとどく(丁心が通じる)」
ねんぎょく
〔年玉〕としだま。
ねんごろする
〔懇する〕いい仲になる。情交する。
「おれがねんごろしてやらう。そなたもおれにほれてぢゃげな。」(近松門左衛門「曾根崎心中」天満屋の段)
ねんしゃ
〔念者〕念をいれる人。ものに凝(こ)ってよく気をくばり研究する人。
「例の念者でござりますか、あっちを見たりこっちを見たり、うるさく側(そば)へ行きます。」(河竹黙阿弥「風船乗噂高閣(ふうせんのりうわさのたかどの)」)
同じ字でも「ねんじゃ」と発音すると意味は全く違ってくる。男色の受け身の方である。
ねんじん
〔胡蘿蔔〕にんじん。
ねんとう
〔年頭〕年始。年礼。「年頭にうかがいました」
ねんね
赤ん坊。人形。また、ねること。児童語。
ねんねこうた
〔ねん寝子歌〕子守唄。
ねんばりねんばり
ゆっくりゆっくり。
ねんりょ
〔念慮〕おもんぱかり。おもい。心のこり。
ねんれい
〔年礼〕年始。