くいかた

〔喰方〕喰うこと。生活。→「かた」
くいこみ
〔喰込み〕収入が少なくて支出が多く蓄えを減らす。マイナス。
くいぞうよう
〔食雑用〕食費。
ぐいちさぶろく
〔五一三六〕特別にすぐれた人はいないという意味。みな同じくらい。どんぐりのせいくらべ。五をぐというのは、ばくちの用語。
くいつめ
〔喰詰め〕生活の立たなくなること。その土地にいられなくなった人を「くいつめもの」ともいう。
くう
〔喰う〕情交する。「喰い散らかす」というと、いろいろの女に関係すること。
くうきラムプ
〔空気ラムプ〕光りを強くするため、芯を丸い筒の形にし、口金の下に穴を多くあけ、空気のよくかようようにした石油ランプ。
「間毎(まごと)の天井に白銅鉱(ニッケルめっき)の空気ラムプを点したれば、」(尾崎紅葉「金色夜叉」)

くえき
〔苦役〕刑務所で働くこと。
くくす
〔括す〕くくりつける。
くくり
〔括り〕おしまい。くくりをつける、しめくくりというのも、これからでている。
くぐり
〔潜〕木戸。
くくりまくら
〔括枕〕中に綿または蕎麦殻、茶殻などを入れ、両端をくくってこしらえた枕。
「生れてはじめて女の懐中へーー見れば、アノきょうかく(胸膈)の間に、何やら和(やは)らかなくくり枕のやうなものが二ッ下って、先に小さな把手(とって)のやうなものがあったが、ありやなんぢゃ。」(津打半十郎他「鳴神不動北山桜(なるかみふどうきたやまざくら)」)

くげん
〔苦患〕苦しみわずらうこと。
くごなわ
〔九五縄〕折詰(おりづめ)をゆわえる細い縄。
くさりかたびら
〔鎖帷子〕小さい鎖をつなぎ合わせた襦袢。歌舞伎では美しいいろどりのを、児雷也(じらいや)や天竺徳兵衛が着ており、仇討の孝子なども白衣の下へ着込んでいる。斬りつけられたときに、刃(やいば)が肉体へふれないためである。→「きごみ」
くさりつきのちょうちん
〔鎖附の提灯〕提灯の手で持つ部分に鎖の付いているもの。
くさをはやす
〔草を生やす〕おとろえさせる。その家がおとろえれば大屋根へペんぺん草がはえる。「あいつの家の屋根へ草をはえさせてやる」
くしこうがい
〔櫛笄〕櫛と笄。語呂の上から昔の人々は重ねていった。笄は、婦人の髪飾りで、金銀、鼈甲(べっこう)、水晶、瑪瑙(めのう)などでつくる。
くじをくう
〔公事を喰う〕裁判になること。「公事をくってひどい目にあった」
くすぬき
楠(くすのき)のなまり。「くすぬき正成」などと発音したものである。

くすりぐい
〔薬喰い〕補強用にする肉食を、昔はこういった。
くそごなし
〔糞ごなし〕めちゃめちゃにけなすこと。頭ごなし。
くそったれ
何の足しにもならない。むだめし喰い。

くださらぬ
〔下さらぬ〕ありがたくないもの。感心できないもの。
くだり
〔下り〕→「のめり」
くだりあめ
〔下り飴〕地黄煎(じおうせん)をいれた茶色のかたい飴。
くちとりもの
〔口取物〕口取肴(さかな)の略。口取りともいう。あまい照焼にした肴を、きんとん、蒲鉾(かまぼこ)、玉子焼、寄せもの、杏(あんず)などと取り合わせ、5品または7品、また3色から9色の数で浅い皿に盛り、お膳のはじめに吸物と共に出すもの。昔は広蓋(ひろぶた)に盛り、硯蓋(すずりぶた)にとりわけてすすめたという。
くちにどよう
〔口に土用〕腹にあることをみんないう。土用干しをさせるという意味だろう。
くちまえ
〔口前〕口先。弁舌(ベんぜつ)。
くちわけ
〔口分〕種類によって区別すること。分類。
くちをすごす
〔口を糊す〕生活ができる。その日その日をしのぐ。
くでま
〔諄手間〕「くどきてま」「くどでま」の略。「くでまがかかった」
ぐでれん
ひどく酔った姿。ぐでん。ぐでんぐでん。ずぶろくぐでん。やたらにいばることもいう。

くにづくし
〔国尽し〕国の名をかきあつめた本。寺子屋で教科書につかった。
くにもの
〔国者〕同郷人。ただし、地方人に限る。いなかもの。
くにゅう
〔口入〕世話。とりもち。
「さうして柳(りゅう、女の名前)が其方(そのほう)へ嫁の口入をいたしたかどうぢや。」(三遊亭円朝「名人長二」)

くねんぼ
〔九年母〕芸香(ヘンルウダ)科の高いときわ木になる柚(ゆず)に似た果実で、香よく甘味がある。香橙。江戸時代にはこの果実を好み、劇場の幕間にも売り歩き、「九年母」の小咄さえあるが、明治中頃以後はすたれた。
くびったけ
〔首ったけ〕大へんにほれること。ほれて深間(ふかま)へはまり込むこと。「足駄をはいて首ったけ」
くびぬきゆかた
〔首抜き浴衣〕首から前後の襟(えり)へかけて、大きな紋や図案が染めぬいてある派手な浴衣。白地や鼠や浅黄や紺で図案され、紺地なら白ぬきになり、祭の揃いなどにみられる。
くもすけ
〔雲助〕宿駅、渡船場、街道を徘徊(はいかい)し、駕籠をかつぎ、または川を渡るのを助け、荷をかつぐ、住所不定の人夫。一定の住所なく雲水(うんすい)のごときゆえ雲助という説と、街道で旅人に駕籠をすすめるさまが蜘蛛の巣を作って虫を捕えるのに似ているという説と、語源が2つある。いまでもあやしげな流しのタクシーの運転手を雲助とよぶ。
くやしんぼう
〔口惜しん坊〕くやしがること。「ふりこかされたくやしんぼうで身請(みうけ)してつれて行(ゆこ)うといふからとても生きてはゐられぬわい。」(仮名垣魯文(かながきろぶん)「西洋道中膝栗毛」)
くらしかた
〔暮し方〕生活。→「かた」
くらびらき
〔蔵開き〕111日、商家で蔵開きと称して鏡餅を割って雑煮を作り、店員らをねぎらって祝宴をもよおすことをいう。
「雑談抄」に「和俗、年の始に蔵を開きて、積蓄(せきちく)の金銀米銭にかぎらず、一切の貸財(かぎい)金を取出して用に充て、売買の事を調(ととの)う。もっとも其年始なれば吉日をえらびて庫(くら)を開くことをいふめり。」(小泉迂外「俳句雑事記」)

ぐりぐり
商売女が甘えて男をいじめるとき、ひじで相手の膝の上をぐりぐりと廻してこづく。「ぐりぐりをきめる」という。

くるしがりの
〔苦しがりの〕貧乏な。
くるる
〔枢〕戸をあけたてするためにこしらえてある「とぼそ」と「とまら」。
ぐれはま
ちぐはぐ。手ちがい。ぐりはま。「万事がぐれはまだ」

くろかも
〔黒鴨〕供の男をいう。江戸時代には供の者が、明治以後は車夫馬丁が黒づくめの服装であり、黒い鴨を連想させたゆえにいう。
くろがんじ
〔黒丸子〕漢方薬で腹痛用の丸薬(がんやく)。
くろざん
〔黒桟〕印度サントメに産する黒のサントメ革、皺(しわ)のあるなめし皮。
くろばおり
〔黒羽織〕黒紋付。
くろぺらの
〔黒ペラの〕黒い、ペラペラの。
くわえぎせる
〔啣へ煙管〕身体に楽をさせていること。坐ったまんま。立ち働きをしない。
「座蒲団の上で啣へ煙管をしながら、一つ首を捻(ひね)れば五千も八千も儲かる。」(三遊亭円朝「塩原多助一代記」)

くわせもの
にせもののこと。

くわせる
刑務所へ入れておくこと。

くん
〔君〕明治中年の、そのころを扱った講談や小説では、金銭をもらいに来た後輩の書生が君(くん)と呼んでいる。君は敬称で(明治末年まで)、同僚を呼ぶ場合の言葉ではなかった。当時の書籍の広告には、氏もしくは先生とあるところを、○○君著と記してあった。→「きみ・ぼく」
くんじゅ
〔群衆〕大ぜい人がむらがること。「随分くんじゅしている」
ぐんだい
〔郡代〕江戸時代は郡代屋敷といって、幕府直轄地ーー管理の土地の民政を扱う屋敷があった。いまの中央区日本橋馬喰町(ばくろちょう)4丁目(浅草より本石町へむかってゆく西側裏)にあり、大正初年まで矢場という売笑街になり、その名称となる。多くこの辺の商店の番頭手代を客にしていた。
gundai郡代付近の図
くんだり
〔辺〕どこそこあたりの、あたりという意味。「目黒くんだりまでわざわざ来た」などとつかう。
ぐんないじま
〔郡内縞〕山梨県郡内地方に産する縞(しま)、甲斐絹(かいき)の一種。