そうごうか

〔総後架〕裏長屋にあった共同便所。三びき立ちの総後架というと、大便所が3戸ならんだ共同便所ということになる。落語「へっつい幽霊」の熊五郎が道具屋の裏手の総後架で用便中、道具屋夫婦のひそひそ話を聞いて運をつかむ。もって総後架の長屋における位置が察しられよう。→「こうか」
そうざい
〔惣菜〕家庭でつくるありあわせの料理。惣菜屋はそれにひとしい簡単な食品を売る店。惣菜料理屋という軽い食事をさせる店もあった。「ほんのお惣菜ですが召し上がって下さい」
ぞうさく
〔造作〕顔立ち。目鼻立ち。建築用語の転用。
そうししばい
〔壮士芝居〕明治20年度の保安条例で、東京から3里以外の地へ追われた政治家のひとりに中江兆民があり大阪へ下ったとき、政府へ対する反抗を自分たちで劇にして自作自演しようと、大阪市新町の高島座で、兆民を顧問として須藤定憲(さだのり、世間ではていけんとよんだ)一座が旗上げをした。女形が裾(すそ)をまくって舞台から政府攻撃をしたり、殺伐な立廻りをやって評判になった。つづいて川上音二郎一座が起り、山口定雄の一派が出来、これを壮士芝居といったが、のちに書生芝居、また新派劇と改められた。
そうじまい
〔総仕舞〕その店のものをのこらず買ってやること。「ないが意見の総じまい」などという。
そうじや
〔掃除屋〕下肥(しもごえ)の汲取人。汲取屋。おわいやに同じ。
そうじゅうろうずきん
〔宗十郎頭巾〕黒縮緬(ちりめん)の袷仕立(あわせじたて)で四角な筒の形をし、額(ひたい)、頬、顎(あご)を包む。寛永のころ俳優沢村宗十郎がはじめてつかったので、この名がある。
そうする
〔相する〕人相を見る。
そうせき
〔送籍〕戸籍謄本。
そうはい
〔壮俳〕壮士俳優の略。できはじめたころの新派俳優。→「そうししばい」
そうばおり
〔総羽織〕関係者全部へ羽織を新調してやる。「総花」の「総」に同じ。→「しきせ」
そうはつ
〔総髪〕額の月代(さかやき)をそらず、全体の髪をのばし、束ねてゆったもの。茶筌髪(ちゃせんがみ)の遺風といい、若年の茶坊主、医師、山伏がゆった。おなじみのところでは由比正雪、天一坊らの髪。
そうばな
〔総花〕花柳界で全員にやるチップ。
そうもんぐち
〔総門口〕本郷根津遊廓の入口。吉原の大門に当る。
そえぶし
〔添臥〕添寝(そいね)。同衾(どうきん)。そいぶし。男女が一しょにねること。
「見れば見るほど美しい、そんな殿御と添臥の身は姫御前(ひめごぜ)の果報ぞ。」(近松半二他「本朝廿四孝」十種香(じゅしゅこう)の場)

そくそく
スーッと。
「すぐにそくそく玄関から案内も待たず上り込みます。」(三遊亭円朝「月謡荻江一節(つきにうたうおぎえのひとふし)」)

そくにたつ
〔束に立つ〕両足を揃えることをソクといい、足をわらず、両足をつけて真直に立つこと(芝居用語)。
そくらをかう
おだてること。けしかけること。

そこつ
〔粗忽〕念の入らないこと。つまらない。つまらない男だと自分でへりくだっていうときにもつかう。
「浪島文治郎と申します。エエ粗忽の浪士でござる。」(三遊亭円朝「業平文治漂流奇談」)
そこをいれる
〔底を入れる〕振舞いにあずかる公の席へ出るか、または見栄の場へ出るかする前に、自費でまかなえるような安い酒を呑んだり飯を食ったりすること。
そぜいきょく
〔租税局〕税務署のこと。
そそける
髪がみだれていること。「そそり髪」

そそり
芝居の千秋楽(最終日)に、シャレに女形の巧い役者が武士になったり、滑稽な役をやる人が悲しい役をして余興のような芝居をすること。廓をただ歩き廻ることもいう。ぞめき。

そだばし
〔麁朶橋〕海苔をつくるために切り取った木の枝をそだというが、それを組み合わせて庭へかけた風流な橋。
ぞっき
一とまとめに安く売買すること。売れない新本を安くうることをぞっき本という。また、何々一と色という場合もぞっきといい、「あいつは唐桟(とうざん)ぞっきだ」といえば、上も下も唐桟ばかり着ている人ということになる。

そっくび
〔素首〕首を強めた意味でいう場合。
そっくびだい
〔素首台〕獄門台。打たれた罪人の首をのせて、みせしめのため通行の人たちに見せる台。
そっくら
そっくり。残らず。
そっこうし
〔即効紙〕即効紙は頭痛膏(ずつうこう)。それを適当に四角に切ってこめかみ顳顬(こめかみ)へ貼った。即効紙には「江戸桜」などというのがあり、江戸前の癇癪持(かんしゃくもち)らしい女房が額(ひたい)へ貼っていると一種の風情があった。
ぞっこん
〔属根〕心底から。しみじみ。
そつじ
〔卒爾〕突然。
そっちゅう
〔始中終〕しょっちゅう。しじゅう。
ぞっとしない
いいものじゃない。

そっぽ
〔容貌〕器量。面体(めんてい)。顔。→「かんぼやつす」。落語「妾(めかけ)の馬」の大工八五郎、赤井御門守(あかいごもんのかみ)の邸で用人三太夫に「即答を打(ぶ)て」といわれ「そっぽをぶて」と聞き違えて三太夫の横顔をなぐりつける。
そでくらつき
〔袖蔵附〕店土蔵(みせぐら)とて、店の片方または両方に土蔵をもうけてあるのを、袖蔵という。中央の店を人のからだに見立てれば、左右の土蔵は、両方の袖の感じだからである。
そでない
つれない。無情なこと。袖にする(すてる)も、このことばからはじまる。
「花魁(おいらん)、そりやちと袖なからうぜ。」(河竹新七「籠釣瓶花街酔醍(かごつるべさとのえいざめ)」八ツ橋部屋の場)

そでなしばんてん
〔袖なし半纏〕ちゃんちゃん子。
そでにする
〔袖にする〕のけものにする。つれなくする。じゃけんにする。すててしまう。
そでのした
〔袖の下〕わいろのこと。
そどく
〔素読〕書をよむのに、意味を説かないでただ文字ばかりを読むこと。
「江戸の武士の男子の教育には文事と武事との二つがあった。文事の方は五歳から七歳までは手習ひ、七歳から読書をはじめる。最初から大学中庸(ちゅうよう)などと云ふものを読む。(略)十歳までの間に四書五経小学の素読を終る。(略)十一二歳の二年間は複習をして素読吟味を受ける準備をする。」(岡本締堂「聖堂講武所」)

そなわる
〔具わる〕人物ができている。
「多助は別に学問もありませんが、実に具はって居りますので」(三遊亭円朝「塩原多助一代記」)

そにん
〔訴人〕訴えること。
そのひおくり
〔その日送り〕その日ぐらし。気まぐれの意味にもいう。
そのもと
〔其許〕あなた。
そばがき
〔蕎麦掻〕蕎麦粉を熱湯でこねて、餅のようにちぎり、蕎麦のつゆまたは生(き)醤油、辛子醤油でたべる。冬の夜にからだの暖まる食品。
そばやのゆとう
〔蕎麦屋の湯桶〕人の話へ口をだす人。そばやでそば湯を出す塗り桶は口がとがっているので、それにたとえた。
そま
〔杣〕木こり。
そら
〔空〕空々しい出まかせ。うそ。とぼけ。「空をつかう」「空をつく」という。
そりがあわない
〔反が合わない〕しじゅう一しょにいて気があわないこと。
そりをうたせる
〔反を打たせる〕刀をそらせてすぐ抜けるようにしておく。
それしゃ
〔其者〕その道の人。くろうと。商売人。色町育ちの女。
それだとって
それだといって。
「夫(それ)だとって貴君(あなた)今日お目にかかったばかりでは御座りませんか。」(樋口一葉「にごりえ」)

それというとそれ
何々をしようとおもいついたらすぐそれを気早に実行にうつすこと。
「それ例の気短かで、それといふとそれだから、」(三遊亭円朝「怪談乳房榎(ちぶさえのき)」)

ぞろっか
ぞろぞろ。

ぞんき
のんきで無責任な奴。「あいつはぞんきだ」

そんじ
〔損じ〕破損。こわれ。
ぞんじのほか
〔存じの外〕案外。おもいのほか。
ぞんしょう
〔存生〕生き永らえること。存命。生存。
「『由良之助は』『いまだ参上仕りませぬ』『存生に対面せで、残念なと申せ。』」(竹田出雲他「仮名手本忠臣蔵」扇ケ谷塩冶館(おうぎがやつえんややかた)切腹の場)

ぞんじより
〔存じ寄り〕心得ていること。承知している所。考えるところ。
「もし隠すなら存寄があるから、ずんずん上って明けるからさう思へ。」(三遊亭円朝「月謡荻江一節」(つきにうたうおぎえのひとふし))

ぞんじよりしだい
〔存じ寄り次第〕おもうまま。
ぞんぜえもん
〔ぞんぜえ者〕ぞんざい者。がさつな人。
ソンデイ
サンデイ(
sundayーー日曜日)。明治初年の読み方。
そんりょう
〔損料〕損料貸しする衣裳。「これは損料物ですよ」