ついえ〔費〕無駄な費用をいう。さらに江戸なまりでは、つうええともいった。ついっとおりついひととおり。普通。通り一ぺん。ありふれた。つうべん〔通弁〕通訳。つかいはやま〔使い早間〕手早くいろいろの人から頼まれた使いをしてやること。つかぶくろ〔柄袋〕刀の柄へ冠せる袋。前袋。つかみたばこ〔掴煙草〕昔は60
匁一とたばのきざみ煙草を、小束(こたば)5
匁ずつに分けて、むきだしにつかみだしては売っていた。5
匁の小乗を紙の輪で結び、それが12
個、さらに大きな紙の輪にキチンと並べられ、一と玉(60
匁)と呼ばれていた。→「たま」つかみりょうり〔掴み料理〕即席料理。つき〔附〕とっつき。第一印象。「あの人はツキがわるい」つきあいがはる〔交際が張る〕交際費のかさむ。「あいつの女房は派手だからつきあいがかさむよ」つきあわせ〔突合せ〕対決。「いっそのこと2
人を突合せにさせてみようじゃないか」つぎかたぎぬ〔継肩衣〕上は肩衣、下は常の袴(はかま)で色のちがうもの。千代田城では、継上下(つぎがみしも)。つきぎれ〔月切〕返済期限がつきる。つきだし〔突出し〕遊女がはじめて客を取ること。つきだす〔突き出す〕面会を謝絶して追い返す。また、番所につれていく。興行場で無料入場者をことわることを、「木戸をつく」という。「さあ、これから二人とも、ここから突出してくんなせえ。騙(かた)りが現(ば)れたその時は、送られる気で新しく晒布(さらし)を一本切って来たのだ。」(河竹黙阿弥「青砥稿花紅彩画(あおとぞうしはなのにしきえ)」ーー白浪五人男」雪の下浜松屋の場)つきはな〔月花〕たのしむこと。「この家だけが私の月花で」つきまち〔月待〕十七夜、廿三夜、廿六夜などに月の出を待っておがむこと。づく「○○次第」「○○がある限り」といった意味の接尾語。金銭や腕力にまかせるのを「金づく」「腕づく」、前々からきまっているのを「因縁(いんねん)づく」「義理づく」「得心(とくしん)づく」「納得づく」などという。づくしもん〔尽し文〕虫づくし、花づくし、山づくしなどでつづった文章や手紙。つぐなむ〔屈なむ〕身をかがめる。つくばい〔蹲台〕一般の場合は庭の手水鉢(ちょうずばち)のあるところ。奉行所では縁先にあたる部分をいう。つけ運または廻り合せ。「つけがわるい」という。つけあわせ〔付合せ〕→「つけあわせもの」つけあわせもの〔付合せ物〕料理の主体になっているもののワキへ配す食品をいう。もちろん、味も、みた目も、主体とつりあうものでなければいけない。「折へ詰めてちょっと附合せもなりたけくさらぬものを、よいか、それはおみやげだよ。」(三遊亭円朝「怪談乳房榎(ちぶさえのき)」)つじうらうり〔辻占売〕多くは少年少女で、つじうらと赤い文字でかいた提灯をさげ、「淡路島かよう千鳥恋の辻うら」と悲しい声を上げて花柳界その他を売り歩いた。大阪では「河内山ひょうたん山恋の辻うら」。その紙を買うと、「今夜はあえる」とか、「あきらめた方がいい」とか、かいてあった。河竹黙阿弥に「霜夜鐘十字辻筮(しもよのかねじゅうじのつじうら)」がある。つじぐるま〔辻車〕流しの人力車。→「したて」つじばんしょ〔辻番所〕江戸市中大名屋敷のある屋敷町に造り、街路を警衛させたところ。つじべんじょ〔辻便所〕共同便所のこと。公衆便所。つっかけげた〔突っかけ下駄〕爪先へ足の指をはさむだけではくこと。つっころばし〔突転ばし〕二枚目。やさ男。ちょっとついたらすぐころびそうな柔弱さをもっているのでいう。紙屋治兵衛・藤屋伊左衛門など。つつしみ〔謹慎〕武士の刑罰で、一定のいる所を定められ、公用以外には外出を許さなかったこと。きんしん。えんりょ。つつなしもの
〔筒なし者〕いつものんきに遊んでいる人。つっぱぬける〔突破抜ける〕突破する。「御用をくったからやうやく裏山通しで突破ぬけて粕壁(かすかべ)へ来て、」(三遊亭円朝「緑林門松竹(みどりのはやしかどのまつたけ)ーーまたかのお関」)つつみさつ
〔包紙幣〕一と包みになっている紙幣。つなひきぐるま〔綱引車〕人力車をひく車夫の前に、もうひとりの車夫が綱を梶棒へ付け、それをひいて走り、速力を倍加させる。→「さんまい」綱引車つねふだん〔常不断〕いつも。「あれでは七蔵様のお気に入るのもコリヤ尤(もっとも)だと、常不断お伝と申して居りまする。」(河竹黙阿弥「綴合於伝仮代書(とじあわせおでんのかながき)」ーー高橋お伝」)つのづきあい〔角突合〕不和のこと。つばめをつける〔燕をつける〕不足分を足す。「さあ兄い、お前この金を持ってつばめを付けて、早く松葉屋の常磐木(ときわぎ)を身受けして、」(三遊亭円朝「緑林門松竹(みどりのはやしかどのまつたけ)ーーまたかのお関」)つべらなべらおしゃべりをすること。ツベコベ。つぼかん〔坪勘〕考えちがい。大工が坪数をまちがえることから、いう。つまおりがさ〔妻折笠〕町家や農家より山詣りに出る者は、男女共にこの笠をもちいた。正面に山形の印がある。
妻折笠つまはずれ〔つま外れ〕相手にされないこと。仲間はずれ。爪はじきにあうこと。つまりさかな〔末肴〕宴会で一ばん最後にだす料理。転じて、どうにも仕方がなくなって出すちえ。つみにどんや〔積荷問屋〕取引品を水陸それぞれの便利に托(たく)すことを一切扱っている問屋。つむ〔紡む〕綿を糸縒(いとより)車にかけ、その繊維を引き出し、撚(より)をかけて糸にする。つむぐ。つめいん〔爪印〕花押(かきはん)または印の代りに、署名した下へ、指の頭に爪ぐるみ墨を付、これを押して証拠としたもの。つめがながい
〔爪が長い〕金を借りてなかなか返さない人。つめる〔詰める〕詰め寄る。膝詰談判をする。「参るとか参らぬとか答へろと詰めれば泣くより外は無いので、誠に心配を致して居ります。」(三遊亭円朝「月謡荻江一節(つきにうたうおぎえのひとふし)」)つもる〔測る〕計量する。測定する。推察する。「そんなこと、はじめからつもっても知れそうなものじゃねえか」「つもっても見るがいい」などという。「私は、最(も)うこれ、生先(おいさき)の測れた体で、明日(あす)が日も分らない。」(小栗風葉「恋慕(れんぼ)流し」)つりえだ〔釣枝〕歌舞伎で舞台の上部へ、天井から横に一列につりおろしてある梅や桜や松などの枝。つりやぐ〔釣夜具〕身体に夜具(やぐ)の重みを感じさせぬため、夜具の表面の中央に鐶(かん)をつけ、紐で天井からつるすようにしたもの。つる〔蔓〕蔓とは入牢のさい、ひそかに牢内へ持って行く金。その金の算段を蔓ごしらえ。蔓なしで入牢すると、牢名主(ろうなぬし)の指図でキメ板(→「きめる」)で叩かれ、スッテン踊をさせられる。「これ、ここは地獄の一丁目で二丁目のねえ所だ。(略)命の蔓は何千何百両もってきた。」(河竹黙阿弥「四千両小判梅葉(しせんりょうこばんのうめのは)」伝馬町牢内の場)つるかめつるかめ〔鶴亀鶴亀〕ツルもカメもめでたい動物なので、縁起の悪いときにこうとなえる。つれいん〔連印〕自分以外の者と連れ立って証書へ印をおすこと。つれしゅう〔連衆〕お連れの人。つれだしちそう〔連出し馳走〕自宅以外のところへ招いて御馳走すること。つれぶし〔連れ節〕合唱すること。一しょに歌う。「連れのざんぎりにつきあッて角力甚九(すもうじんく、俗曲)をつれぶしにうたひ、」(仮名垣魯文「西洋道中膝栗毛」)ツンケンツンツン。プリプリ。